経営・戦略

2026.11.01 07:53

民主主義はビジネス資産である CEOたちはなぜ侵食を傍観するのか

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トランプ政権が、米国の繁栄を長く支えてきた民主主義の基盤を覆そうとするなか、ビジネスリーダーたちは傍観者として受け身の姿勢をとっている。筆者が話を聞いた多くの企業リーダーはこうした脅威を認識しているが、報復を恐れて声を上げることに消極的だ。その慎重さは理解できるが、近視眼的である。米国最大級の企業は極めて好調であり、その大きな理由の一つは、この国の民主的な構造にある。しかし、その基盤がいま圧力にさらされるなか、同じ企業が失うものは大きい。

企業には行動する力もある。従業員が投票できるようにすること、民主的制度を擁護して声を上げること、そして自社を代表して発言する経済団体にリーダーシップを発揮するよう働きかけることだ。

これは集団行動の問題である。誰も先頭に立ち、批判の矢面に立ちたくはない。大企業の多くは政府との有利な契約を抱えており、ほとんどの企業は何らかの形で政府規制の対象になっている。多くはまた、One Big Beautiful Bill Actや一連の大統領令を通じ、減税や規制緩和から短期的な恩恵を受けてきた。大統領の政策課題を声高に支持する見返りとして、政府契約を獲得した企業もある。その結果、ほとんどの企業は様子見の姿勢をとり、嵐が過ぎ去ることを期待している。

だが、これは甘い考えだ。危機にさらされているのは、米国の経済的成功の基盤である。数十年にわたり、米国経済は世界の羨望の的だった。世界の生産の約4分の1を占める圧倒的な最大経済国であり、ドルはいまなお世界で最も選好される通貨である。中国、ロシア、湾岸諸国などの外国人富豪は、米国の法制度と銀行システムが自らの富を守ってくれると信じ、ニューヨーク、ロサンゼルス、マイアミにセカンドハウスを購入している。

米国の経済成長は、とりわけ上位層において劇的だった。10年前には時価総額1兆ドル(約157兆円)企業は存在しなかったが、現在は15社ある。そのうち3社を除くすべてが米国に本社を置いている。いわゆる「マグニフィセント・セブン」と呼ばれるテック企業(エヌビディア、マイクロソフト、アップル、グーグル、メタ、アマゾン、テスラ)の時価総額は約23兆ドル(約3620兆円)で、欧州に本拠を置く全企業の総額にほぼ匹敵する。

この金融面での成功は、普通選挙権、独立した裁判所、自由な報道、腐敗を防ぐ安全装置に根ざした安定的な政治制度から大きな恩恵を受ける、米国の好ましいビジネス環境によって支えられてきた。また、米国の世界最高水準の大学制度によって育まれるイノベーション文化にも支えられている。大学は将来のリーダーを教育すると同時に、最先端の研究を行っている。この制度の健全性は、公的腐敗との闘いや少数派有権者の保護に取り組む連邦政府の監視機関によって守られてきた。

米国の経済的成功は、世界における政治的・外交的リーダーシップによっても高められてきた。第2次世界大戦以降、米国は集団安全保障、経済発展、人権と法の支配へのコミットメントを土台とするルールに基づく秩序を支えてきた。この秩序は、7000万人以上が死亡し、さらに数百万人が難民となり、欧州とアジアの経済が廃墟と化した戦争の惨禍から生まれたものだ。

ビジネスリーダーはいま、自らの経済的成功を支えてきたこうした柱が侵食されていくのを目の当たりにしている。この脅威は、イランに対する無謀な軍事行動に起因する燃料費の上昇をはるかに超える。米国企業と農家が最も恩恵を受けてきたグローバル化した経済を損なう、恣意的で、絶えず変わり、自滅的な関税の賦課よりもはるかに深刻である。欧州、カナダ、その他の民主的なパートナーとの数十年来の同盟を拒絶することさえも超えている。

政権の取り組みは、この国が建国以来その上に築かれ、繁栄してきた民主主義の構造を引き剥がしつつある。これには、経済活動を予測可能にし、契約を執行可能にし、独立した裁判所を通じて紛争を解決できるようにする法の支配の枠組みが含まれる。

この予測可能性が、企業に投資し、労働者を雇用し、事業を拡大し、管理可能なリスクを取る余地を与えている。経済学者のジョージア・レベンソン・ケオハネはForeign Affairsでこう書いている。「強固な法制度は、企業、地方自治体、国家の借り手にとっての保険料やリスクプレミアムを含む変動性と取引コストを低下させ、市場が安定的で、公正で、競争的であるという信頼を企業と投資家に与える。歴史的に、米国の途切れることのない法の支配の実績は、同国を資本の安全な避難先とし、投資とイノベーションにとって魅力的な目的地にしてきた」

米国の選挙の健全性はいま、危機にさらされている。近年、一部の州議会は、身分証明書の要件、有権者名簿からの削除、ゲリマンダーによる選挙区割りを通じて、少しずつ投票権を削り取ってきた。一方、連邦政府は行政権が選挙の仕組みにどこまで及び得るかを試している。こうした行動は、制約のない行政権に対する主要なチェック機能、すなわち投票そのものを摩耗させている。

民主主義に対する他の脅威も、いまや十分に記録されている。これには、裁判官に対する身体的脅迫、報道機関における批判的な声を弱体化させ、沈黙させ、あるいは公的なアクセスを拒む試み、大学に対して教える科目、採用する教員、受け入れる学生を指図し続ける取り組み、大統領の政策課題への政治的忠誠を何よりも優先させる公務員制度改革が含まれる。さらに、軍事化を強める移民当局の劇的な拡大、軍の政治化、そして今後の選挙の軍事化に向けた動きも含まれる。公的腐敗はいまや、あらゆるレベルの政府契約に浸透している。

中間選挙とその先に向かうなか、企業リーダーは厳しいが避けられない選択に直面している。短期的な商業上の利益と、すでに自社の商業的利益だけでなく、自社が活動するより広範な政治制度をも損ないつつある民主主義への根幹的な脅威を区別する必要がある。これは党派的な問題ではない。私たちが一つの国民として何者であるのか、そして自由で公正な選挙を含む民主主義の伝統を維持できるのかという問題である。

ビジネスリーダーにとって、こうした脅威は加速するにつれて、対処がますます難しくなる。傍観することはもはや実行可能な選択肢ではなく、安全な選択肢でもない。私たちの民主主義の基盤は、彼らの成功の基盤でもあるからだ。

彼らにできることは多い。ビジネスリーダーは、会社が従業員の投票権を支持していることを従業員に明確に伝えることができる。民主主義は守られなければならないと、国民や公職者に伝えることもできる。そして、全米商工会議所、ビジネス・ラウンドテーブル、全米製造業者協会は、加盟企業に共同で行動するよう促すことで集団行動の問題に対処できる。そうすれば、どの企業も単独で先頭に立つ必要はない。

ロバート・F・ケネディは1966年、ケープタウンの学生たちに語った。「道徳的勇気は、戦場での勇敢さや卓越した知性よりも、はるかに希少なものである。しかしそれは、変化を最も痛みをもって受け入れる世界を変えようとする者にとって、唯一不可欠で、極めて重要な資質なのだ」。いまこそ、ビジネスリーダーが私たちの民主主義の基盤と未来を守るため、道徳的勇気を奮い起こすべき時である。

(forbes.com 原文)

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