起業家が事業の初期の成功を支えたプロセスや習慣にこだわりたくなるのは当然のことだ。しかし、企業が成長するにつれ、少人数チームでかつてうまく機能していた非公式な慣行は、従業員が増加し責任範囲が広がるにつれて維持が困難になる。
従業員数が50人を超えた時点で、リーダーは慣れ親しんだ働き方が依然として事業のニーズを満たしているかを見直す必要があるかもしれない。以下、Forbes Business Councilのメンバーが、企業の成長に伴って効果が薄れる可能性のある非公式な慣行と、代わりにリーダーが導入すべき仕組みについて語る。
1. CEOの「オープンドア・ポリシー」への依存
CEOに「ちょっといいですか」と声をかけられるオープンドア・ポリシーは、企業が50人を超える規模になると機能しない。代わりに、しっかりした組織図と明確に文書化された手順に基づく、明確なコミュニケーション経路を確立すべきだ。「どこで滞っているのか」を確認する短いセッションを設け、CEOが質問を追跡すれば、大きな成果につながる。──ベッツィ・ビックスビー(Meridian Associates Inc.)
2. 文脈の共有を創業者に依存すること
機能しなくなる慣行の1つが、文脈の伝達を創業者との距離の近さに依存することだ。初期のチームは創業者と常に対話することで「なぜそうするのか」を理解できるが、組織の階層ができると破綻する。リーダーは意図、トレードオフ、意思決定のロジックを組織全体に可視化する必要がある。企業が拡大するにつれ、文脈はインフラの一部とならなければならない。──ジル・タラロ(Rollick, Inc.)
3. 場当たり的なコミュニケーションプロセスを用いる
廊下での会話、個人的な関係、場当たり的な意思決定による非公式なコミュニケーションは、企業の成長とともに急速に機能不全に陥る。リーダーはそれを明確な運営リズム、つまり定義された責任、透明なコミュニケーション経路、文書化された意思決定、一貫した説明責任に置き換えるべきだ。目標はより官僚的になることではなく、誰が誰を知っているかに依存することなく、文化・スピード・信頼をスケールさせるのに十分な構造を作ることだ。──アレハンドロ・マルティネス(Propelling Tech)
4. 定型プロセスを記憶に頼って管理すること
破綻する慣行の1つが、記憶頼みの運用だ。標準的な修正策が失敗するのは、マニュアルが書かれた当日に形骸化し始めるからだ。プロセスをツールに組み込み、ウィキに記載された内容をシステムが自動で強制するようにする。Scentoが極めて小規模なチームで8万5000人の会員に対応できるのは、返金、更新、エスカレーションが記憶ではなくソフトウェアとして実行されるからだ。文書内のプロセスは単なる提案にすぎない。システム内のプロセスこそが現実だ。──セバスティアン・ドブリンチ(Scento)
5. 採用、オンボーディング、研修をその場しのぎで行うこと
その場しのぎはやめることだ。小規模な会社では、採用、オンボーディング、研修が毎回ゼロから作成され、同じ少数の人物が担当するため機能する。しかし、50人を超えるとそれは崩壊する。採用、オンボーディング、研修の方法を詳細に定めた、シンプルで再現可能なフレームワークを構築しよう。完璧である必要はない。書面に残して運用し、不足していた点をヒアリングし、回を重ねるごとに改善していけばよい。──マイケル・マーシンガー(HR HealthCare)
6. 単一のナレッジ保有者に依存すること
ある時点で「知っている人に聞く」というやり方は効率的ではなくなり、リスクとなる。組織が成長すると、意思決定の背後にある「理由」が見失われがちだ。役割が変わり、過去の前提が事実として再認識され、文脈が個人の記憶に依存するようになる。組織的な記憶を、何が変更され、何が引き続き重要で、何を信頼できるかについての、共有された最新の記録へと置き換える必要がある。──アンナ・ベロワ(OpenWay AI)
7. リーダーへの非公式なアクセスに依存する
小規模な組織では、リーダーに気軽にアクセスできることが利点になる場合が多い。リーダーは事業で起きていることを直接把握でき、従業員は会社の優先事項、戦略、方向性を見通せるからだ。企業が成長するにつれ、リーダーはスキップレベルミーティング、ファイアサイドチャット、コーヒーを交えた対話など、開かれた対話のための場を通じて、そのつながりを維持しなければならない。目標は、スケール可能な構造の中で親密さと透明性を保つことだ。──ジェニファー・ウォーターズ(BioCareSD)
8. すべての意思決定を上司に通す
従業員50人の段階でなお、重要な意思決定のすべてに上司が必要なら、スケールしたのではなく、ボトルネックを生んだだけだ。20人規模なら、「上司に聞けばいい」や、短い会話やSlackメッセージで意思決定するやり方は驚くほどうまくいくことがある。50人以上になると、その非公式な習慣が組織全体を遅らせる。意思決定の責任者、チームが自律的に決められること、そして本当にエスカレーションが必要なタイミングを明確に定義すべきだ。スピードは保ち、依存はなくす。──ブレイジー・フラッシュ(Blazy Flash)
9. 企業文化を明文化しない
従業員数が50人を超えて拡大する際、文化を単なる社内の「雰囲気」ではなく、明文化されたプロセスにすることが極めて重要だ。このような社会関係資本の側面は、企業の無形資産の重要な一部であり、会社に大きな価値をもたらす。文化が明文化され、再現可能になれば、新入社員が文化に適応し、自身の居場所を見つけることがはるかに容易になる。──スコット・スナイダー(Exit Planning Institute)
10. クライアント業務を共有知識に頼る
スケーラビリティを失う慣行とは、クライアント業務の進行を組織の共通知識に依存することだ。10人の規模であれば、全員が同じ会話を聞いている。しかし50人になると、細部が見落とされるようになる。シンプルな運用システムを導入しよう。1人の責任者、書面による要約(ブリーフ)、明確な引き継ぎ、そして週次の制作レビューだ。構造こそがスピードと品質を守る。──タヴァレス・ビバリー(Beverly Boy Productions)
11. 従業員を硬直的な役割に閉じ込める
事業が成長するにつれ、固定化され限定された業務範囲を持つチームメンバーは、既存の範囲外で働いたり他者を支援したりしなくなる可能性がある。放置すれば、これがチームの連帯感に悪影響を及ぼす恐れがある。成功を収めるためには、相互支援とチームの結束を重んじる文化を導入すべきだ。──ジーナス・クライシャ(Asia Pacific Sales & Marketing Academy Pte Ltd)
12. 会社の最新情報を口コミで共有する
重要な会社の最新情報を口コミに頼るやり方は、従業員が50人を超えると機能しなくなる。情報は簡単に失われ、混乱を招く。リーダーは非公式な雑談を明確なコミュニケーションシステムに置き換えなければならない。定期的な全社ミーティングや中央集約型のデジタルワークスペースを設置することで、企業の成長に伴い全員が共通の認識を維持できるようになる。──ハビブ・アル・スレイマン(SIU Swiss International University VBNN)
13. すべての会議に全員を招く
従業員が50人を超えたら、全員がすべての会議に出席することを期待するのはやめるべきだ。50人未満なら、チーム全員が戦略会議、営業レビュー、製品に関する議論に同席でき、それは透明性のように感じられる。50人を超えると、同じ感覚が意思決定を薄め、予定表を膨らませる。招待制の会議に移行し、それ以外の全員には議事メモを公開すべきだ。出席は重要性のシグナルではなくなり、その場にいない人々に時間が返される。──クリス・キル(EO Staff)
14. 記録なしで顧客の好みを記憶する
サービスのパーソナライズを記憶だけに頼るのはやめよう。例えば、小規模なハイヤー会社では、静かな乗車、特定のルート、あるいは早めの到着を好む顧客を、創業者と数人の運転手が記憶している。チームが50人を超えて成長すると、その知識にはばらつきが生じ、誰が配車を担当するかによってサービス品質が左右されるようになる。Emelxでは、好みが各顧客のプロフィールに記録されており、担当運転手が迎えの前に確認できるようになっている。──アヌーシュ・シャマエイ(Emelx)
15. クライアントへの非公式な状況確認に頼る
企業が成長するにつれ、リーダーは単に顧客の様子を確認するためだけの定期的な「雑談」をやめる必要があるかもしれない。誤解のないように言うと、これは非常に重要な慣行であり、完全に諦めるべきだと言っているわけではない。しかし、少人数チームの方が実行しやすい。より大きなチームでは、個人間の関係維持に加え、カスタマージャーニー、学習曲線、ペインポイントを理解するための構造を構築する必要がある。これには、営業、カスタマーサクセス、テクニカルサポート、プロダクトマネジメントにわたる部門横断的な取り組みが必要だ。──アンヘル・ヴィーニャ(Denodo)
16. 人事部門のサポートなしで従業員の問題に対処する
人事部門を設置すべきだ。従業員が守られていると感じ、問題を相談できる相手がいることを認識してもらう必要があるからだ。マネジャー個人で対処するのは不健全であり、企業文化の面でもリスクとなる。多くのリーダーが望む回答ではないかもしれないが、これが正しい答えだ。人員を増やしていけば、不適切なマネジメント、扱いづらい従業員、複雑な職場環境などが遅かれ早かれ発生する。──エドワード・モリス(Enigmatica)
17. 経営陣の好みでマネジャーを選ぶ
小規模企業では、経営幹部の目に入り、好かれている人物をマネジャーに選ぶことがよくある。50人を超えると、リーダーは誰が実際にチームをより良くしているのかを見失う。私がいま昇進を決める際には、誰が応募したかを言わずに、チームに対して、すでに誰を自分たちのリーダーと見ているかを尋ねる。ある時、チームは他の応募者より新しいメンバーの名前を挙げ、その人物がその役割を得た。チームはどんな面接よりも、この1年を明確に見ている。──クリス・サンド(You Are Capable Of More)
18. 内輪の会話で意思決定を行う
「会議の裏の会議」は、企業が成長すると機能しなくなる。内輪の会話は効率的に感じられるかもしれないが、情報を分断し、意思決定を不透明にし、水平的な協働を弱める。それらを部門横断的なフォーラム、明確な意思決定権限、文書化された結果、共有された説明責任に置き換え、適切なステークホルダーが意思決定の後ではなく前に貢献できるようにすべきだ。──ブリトン・ブロック(Navy Federal Credit Union)
19. 責任範囲を曖昧なままにしておく
組織が大きくなるにつれ、スケールするためには役割の明確化が不可欠となる。初期段階では、1人の人間が新規開拓、アカウントマネジメント、事業開発を兼任することもあるだろう。AIによって1人がこなせる範囲は広がるかもしれないが、成果に結びついた明確な責任範囲が必要であることに変わりはない。事業を拡大する際には、活動量と成果はイコールではないということを明確にしなければならない。──デイヴィッド・カーンステッド(Branch)



