AIは組織が人に求める業務を変えつつある。役割を再編し、責任を移行させ、従業員が成功するために必要なスキルを変化させているのだ。企業や組織が業務遂行におけるAIの位置づけを決定するなかで、こうした変化は人とテクノロジーをめぐる新たな人事決定を生み出している。
「スキルファースト(スキル重視)」のアプローチは、業務に必要なスキルと人材が持つ能力に着目することで、そうした意思決定を行うための枠組みを提供する。企業は、職務や役職、資格だけに主に頼るのではなく、スキルを活用して採用、育成、適材適所の配置を行うことができる。
多くの企業がすでにこのアプローチの価値を認めている。より困難なのは、それを実践に移すことだ。
スキルファーストの理念と実践の間にあるギャップ
企業におけるスキルファーストの実践を支援する非営利団体SkillsRightの最新の調査によると、採用担当マネージャーの86%が個人としてスキルファーストのアプローチを支持しているものの、一貫して適用しているのはわずか3分の1にとどまる。「信念として支持することと、実際に実行することとは別であり、それには大きな労力が伴う」と、SkillsRightの最高経営責任者(CEO)を務めるデビー・ダイソンは語る。「これは単なる言葉ではなく、実践そのものを変えなければならないのだ」
企業はスキルに焦点を当てたいと考えているかもしれないが、依存している既存のシステムや慣行の多くは、業務遂行に必要な能力よりも依然として従来型の資格や学歴を優先している。
「スキルファーストこそが我々に必要な肯定的破壊(ポジティブ・ディスラプション)になると強く信じている」とダイソンは述べる。「何十年も続けてきたのと同じ慣行や同じ採用原則を使い続けることはできない。人材獲得戦略全体が進化しなければならないのだ」
ダイソンによれば、最大の障壁の1つは構造的なものだという。従来の応募者追跡システム(ATS)や人事システムは、スキルを継続的に更新しなければならない環境向けに設計されていなかった。その限界は採用プロセスそのものに表れることがある。SkillsRightは企業の求人票を定期的に分析しており、より幅広い人材プールへのアクセスを含め、組織が望むと表明していることと、実際の採用プロセスの機能との不一致を目にしている。
スキルの評価もまた別の課題だ。企業は原則としてスキルファーストを支持していても、能力を一貫して測定するためのツールや自信がまだ不足している場合がある。新しいツールがそのギャップを埋めるのに役立っている。SkillsRightは最近、リアルタイムでコミュニケーション、問題解決能力、批判的思考力をテストする業務シミュレーションを提供するSkillfullyと提携した。また、従来の履歴書では隠れがちな求職者のスキルを表面化させるhellohiveの履歴書テクノロジーも買収した。目指すのは、SkillsRightが呼ぶところの、職務が求めるものと求職者が実際にできることとの「精緻なマッチング(プレシジョン・マッチング)」だ。
企業は資格や証明書(クレデンシャル)の解読力を高める必要もある。185万以上の資格が存在するなかで、どれが真のスキルを示しているのかを見極めることはますます複雑になっている。SkillsRightがバーニング・グラス研究所と共同で1000社以上の大手企業の採用を調査したクレデンシャル・フルエンシーに関する研究では、「クレデンシャル・フルエンシー(資格の解読力)」を、どの資格が重要で、どのようなスキルを表し、それをどのように採用決定に活かすかを理解することと定義している。クレデンシャル・フルエンシーの高い企業は、資格を自社の職務に必要なスキルと結びつけ、それらのシグナルを一貫して適用することに長けている。ポイントは単により多くの資格を受け入れることではなく、それらが個人の能力について何を示しているかを理解することだ。
AIが再定義する「重要なスキル」
AIは仕事そのものの構造を再編しつつあると、ダイソンは語る。企業は、どの業務をAIに任せられ、どれに引き続き人間が必要か、役割がどのように変化し、より複雑で戦略的な業務を処理するために従業員にどのようなスキルが必要かを決定し始めている。かつて定型業務の実行が中心だった役割は、分析、問題解決、コンサルティング、判断へとシフトしている。例えば、カスタマーサービスの担当者は、クライアントのアカウントマネージャーのように行動することが増え、データ入力の業務はデータ分析へと進化していく可能性がある。
AIがより定型的で管理的な業務や技術的タスクを吸収するにつれて、判断力、批判的思考力、適応力、コミュニケーション力といったスキルがより価値を持つようになる。しかし、それらはまさに従来の採用システムや慣行では適切に評価できないスキルなのだ。
SkillsRightの永続的スキル(デュラブル・スキル)に関する調査によると、採用担当マネージャーが「学位を持つ応募者は持たない応募者よりも永続的スキルを備えている」と思い込む確率は3倍高い(11%に対し33%)。しかし、そうした思い込みは、多くの場合、それらのスキルの直接的な評価に基づいたものではない。その結果、学位を持たない優秀な候補者が見落とされてしまう可能性がある。
スキルファーストのアプローチは、採用、要員計画、業務再設計にわたる決定を結びつけることができると彼女は言う。専門的なスキルから人間特有の永続的スキルまで、行うべき業務とそれに必要なスキルから出発することで、組織は人、テクノロジー、あるいはその両方の組み合わせのどこで価値を生み出せるかをより的確に判断できるようになる。
スキルファーストを定着させ、スケールさせる方法
スキルファーストが理念から実践へと移行するためには──特にAIが仕事と必要なスキルの両方を変えつつある現代において──組織の運営方法そのものに組み込まれなければならない、とダイソンは語る。
それは、生産性の向上、プロセスの最適化、リソースの配分など、組織が解決しようとしているビジネス課題を明確にすることから始まる。そこから企業は、どの業務を自動化または拡張すべきか、そしてどの人間的能力が不可欠であるかを決定できる。
「スキルファーストは一貫した共通言語であるべきだ」と彼女は述べる。「やろうとしている業務の種類、自動化しようとしていること、改善しようとしていることについてまず考えるべきであり、そのうえで何が必要なスキルなのかを考えるべきなのだ」
それはまた、スキルが組織全体の意思決定に一貫して反映されるよう、リーダーシップ、システム、ツール、期待値を整合させることも意味する。
ダイソンは、組織がスキルファーストの実践を組み込むのに役立つ5つのシフトを提示している。
1. 組織文化に向き合う
スキルファーストは、組織のミッション、バリュー、事業戦略に組み込まれる必要がある。リーダーは長年抱かれてきた思い込みに疑問を呈する姿勢を持つ必要があり、採用担当マネージャーには、スキルファーストを一貫して適用するためのガイダンス、研修、そして実践的なツールが必要だ。
2. インフラを更新する
企業には、必要なスキルによって役職を定義し、全従業員のスキルと能力を把握し、それらの能力が時間の経過や職務をまたいでどのように進化するかを追跡するシステムが必要だ。AIはスキルデータの管理に役立つが、AIシステムが過去の採用パターンで学習される際のバイアスにも注意を払う必要がある。
3. 当事者意識(オーナーシップ)の範囲を広げる
スキルファーストは採用部門だけに閉じるべきではない。人事、人材開発、ビジネスリーダー、そして現場のマネージャーが、採用、育成、配置転換、より広範な要員計画の意思決定において、スキルがどのように反映されるべきかについて共通のアプローチを持つ必要がある。説得力のあるリーダーシップの支援、組織全体のアライメント、チェンジマネジメントが、スキルファーストを単なる一施策から一貫した働き方へと変貌させる。
4. 組織全体にスキルファーストを適用する
スキルファーストは採用だけでなく、人材のライフサイクル全体を通じて実践されなければならない。組織がAIを導入し仕事を再設計するにあたり、企業は自社の従業員にどのような能力が備わっているか、変化する役割においてどのスキルが応用できるか、そして従業員が新たなスキルを習得する機会がどこに必要なのかを把握する必要がある。これは、社内流動性、人材開発、要員計画にスキルファーストを適用することを意味する。
社内でのスキル開発は、人材の育成と定着の戦略でもあるとダイソンは指摘する。「採用活動が停滞期に入ったとき、組織の活力を維持する最良の方法は、社内の従業員に注力することだ」
5. 進捗を追跡・測定する
新しいスキルファースト専用の指標を作るべきではないと、ダイソンは助言する。採用速度、戦力化までの時間、定着率、社内移動率など、組織がすでに追跡している主要業績評価指標(KPI)にスキルファーストを組み込むのだ。そして、業務と人材の変化に合わせて調整できる準備を整えておくことが重要だ。
「スキルファーストは『学位は不要』という言葉の言い換えではない」とダイソンは言う。「他のあらゆる要素を考慮する前に、まずは私のスキルを見て、より多角的で地に足のついた決定を下してほしいということなのだ」
SkillsRightは、スキルファーストを理念から実践へと導くシステムやプロセスを開発することで、企業が必要とするスキルと人々が備えている能力とのギャップを埋めている。
スキルファーストのアプローチで人材変革に取り組む準備はできただろうか。SkillsRightへのお問い合わせは skillsright.org/get-started まで。



