過去3年間、企業は競ってAIを導入してきたが、今やその議論の焦点は変わりつつある。賢明なビジネスリーダーたちは、ライセンス数やID数、トークン利用量で導入の成功を測るのではなく、AIがいかに価値を生み出せるかを問い始めている。マイクロソフトはAIによる成果を保証するために数十億ドルと数千人のエンジニアを投入することを約束し、アマゾン ウェブ サービス(AWS)もまた、顧客の業務現場にエンジニアを常駐させてリターンを証明するために約10億ドル(約1570億円)を投じると表明した。「より多くのAIを使おう」というメッセージは、「いかに価値を提供しているか」へと移行した。しかし、この魅力的なアピールは、現状では大半の買い手が信頼性をもって評価する手段を持たない主張の上に成り立っている。
約束と証明の間にある隔たりは、すでに明らかだ。MIT(マサチューセッツ工科大学)の「2025 State of AI in Business」調査によれば、企業における生成AIの試験導入のおよそ95%は、最終損益に測定可能な影響をもたらしていない。
その理由は、測定そのものよりも、AIが何になったのかに関係している。従来のモデルでは、優れたソフトウェアが人の生産性を高めた。現在、AIは営業担当者のアカウント調査からサポートチームのチケット対応キューに至るまで、仕事そのものの大部分を担いつつある。それにより、マネジメント上の問いが変わる。企業はもはや、あるツールが採算に合ったかどうかを判断しているだけではない。どの仕事を人が担い、どの仕事をAIが担うべきかを判断しているのである。
このパターンをレキシ・リースほど多様な視点から観察してきた経営者は少ない。彼女はグーグル在籍時、独立した効果測定基準が確立されて初めて拡大したプログラマティック広告プラットフォームの構築を支援した。また、Gustoの最高執行責任者(COO)として、中小企業が従業員を管理するための給与・人事システムを統括した。現在は、AIが実行する業務のマネジメントシステムを開発するパロアルト拠点の企業Lanai(ラナイ)の創業者兼CEOを務めている。
「勝つ企業は、AIを最も多く使う企業ではない」とリースは語る。「人間と機械の間で仕事を配分することに卓越した企業だ。それは従業員1人当たり売上高、営業利益率、そして最終的には成長に表れる」
企業が未だにAIを単なるツールとして管理していることを示す最初の兆候は、その会計処理方法にある。AIエージェントが1万件のサポートチケットを解決した場合、それは帳簿上「ソフトウェア費用」として計上される。しかし、人間がその作業を行った場合、それはマネージャーが責任を負うコストである「人件費(労働コスト)」だった。Lanaiがウェイクフィールド・リサーチと共同で米大手企業のテクノロジー幹部200人を対象に実施した「2026 AI Labor Report」によると、現在78%がAIを「ソフトウェア」と「労働力」の双方とみなしていることが分かった。しかし、5人に4人近くが、AI支出を売上や利益に結びつけられないため、予算削減を懸念している。AIをソフトウェアとして計上する企業は「そのツールが採算に合ったか」を問い、労働力と捉える企業は「誰がこの仕事をするべきか」というより本質的な問いを立てる。
この断絶は経営トップから始まっている。成果の証拠よりも導入への意欲が先行しているのだ。筆者の会社であるプロスパー・インサイツ&アナリティクス(Prosper Insights & Analytics)の意識調査によると、従業員の生成AI利用率が38%であるのに対し、役員や事業主の利用率はすでに53%に達している。
しかし、自律的に行動するシステムであるエージェント型AIでは、その差はさらに広がる。経営幹部および事業主の34%がエージェント型AIを良いアイデアだと考えており、同意する従業員の19%のほぼ2倍である。
また、経営幹部は従業員に比べ、エージェント型AIをすでに利用している可能性がほぼ3倍高い(18%対7%)。
それにもかかわらず、経営幹部の約4割が、このテクノロジーには依然として人間の監視が必要であり(39%)、誤った情報を返す可能性がある(40%)と答えている。KPMGのAI責任者であるトッド・ロールはビジネス・インサイダー誌にこう端的に語った。「エージェントをチェックするためのエージェントを構築する必要がある。アウトプットの確認が不可欠だ」。経営リーダーたちは、AIが実際にどのタスクを巧みにこなしているか明確に把握できないまま、現場の浸透度合いを上回るスピードで業務の再設計を進めているのが実情だ。
そのギャップを縮め始めている企業は、仕事そのものを見つめ直すことから着手している。地方自治体が住民との対話、会議の運営、サービスリクエストの管理に使用するソフトウェアを開発するCivicPlus(シビックプラス)は、特定顧客担当部門において、最もAIに精通したユーザーがチーム平均の約5.6倍のAI活用レバレッジを生み出していることを突き止めた。そうしたユーザーは、公開されている見込み客の情報を商談用ブリーフィング資料へと変換する、再現可能なワークフローを構築していた。企業がこれらのワークフローを可視化できたことで、収益組織全体で検証し、拡大展開できるように再利用可能なステップへと分解した。
ウーバー(Uber)では、最高技術責任者(CTO)のプラヴィーン・ネッパッリ・ナガが、AIに精通した30人以上のエンジニアを、財務から法務に至る16の業務部門の専門家とペアにし、同社が「エージェンティック・ポッド(Agentic Pods)」と呼ぶチームを結成した。これにより、ある資本配分のワークフローの処理時間は15時間から30分へと短縮された。彼がLinkedInで共有した学びは次の通りだ。「最大の成果は、単一のタスクを自動化することから得られることはめったにない。ワークフロー全体を再考することから生まれるのだ」
ここで、リースの広告業界での経歴が示唆に富むものとなる。かつて広告プラットフォームは自ら売っているインプレッションの価値を自ら報告し、いわば自分の宿題を自分で採点していた。市場が成熟したのは、第三者検証、共通基準、合意された貢献度評価(アトリビューション)手法を備えた独立した測定基準が登場してからだった。AIにはまだそれに相当するものがない。ベンダーが成果を定義し、買い手には異議を唱えるための可視性がない。OpenAI(オープンAI)はChatGPTの内部で何が起きているかを顧客に説明でき、マイクロソフトは自社スイートについて、Anthropic(アンソロピック)はClaude(クロード)について説明できる。しかし、企業はそれらすべてを横断して運用することが増えている。Lanaiの「AI Labor Report」では、組織の53%が、自動化された作業の大部分が誰も監視していないアプリケーションを介して実行されていると回答した。
「業務は個々のベンダーの上位概念にある」とリースは言う。AIに必要な審判は、別のベンダーではない。すべてのツールを横断して業務を可視化できる主体だ。企業がその視点を持つまでは、推測でギャップを埋めるしかない。同調査では経営幹部の43%が、成果にAIが関与していた場合、「AIが貢献したとみなしている」と回答している。
少数の企業はすでに、このような方法でAIを管理している。Lanaiの調査で、ビジネス成果をAIに帰属させる明確な方法を確立していた組織はわずか12%だった。そうした企業はAIのコストを労務費の項目として扱い、その貢献を正式な財務システムに記録し、最高財務責任者(CFO)が説明を求める前に説明責任の仕組みを整えている。彼らはAIを正当化すべきツールとして扱うのをやめ、管理すべき仕事として扱い始めている。それ以外の企業は、まだ誰かがスコアを付けてくれるのを待っている。
だからこそ、成果に関する議論は長期的にはROI(投資対効果)の問題にとどまらない。本質的な問いは「ビジネスをどのように運営すべきか」である。数人の従業員が完成させたワークフローを組織全体の共有スキルにすべきか。定型タスクはAIエージェントに任せるべきか。社員がルーティンワークに使っているツールに無駄な費用を払っていないか。50人を採用するのか、100体のエージェントを導入するのか、それとも既存の社員を中心にワークフローを再設計するのか──これらは今や、同一の資本配分における選択肢なのだ。
リースによれば、優位に立つ組織は、自社の人材がAIを使ってすでに何をしているのかを把握する術を学ぶ組織である。
「企業の中には、未来のオペレーティングモデルの断片がすでに存在している」と彼女は語る。「多くのリーダーには、単にそれを見る手段がないだけなのだ」
AIの成果問題は、ベンダーが自らの結果を採点することで解決されるものではない。仕事そのものを管理することを学んだ企業によって解決されるのである。
開示:上記で言及した消費者心理調査は、筆者の会社であるプロスパー・インサイツ&アナリティクス(Prosper Insights & Analytics)が実施したものである。これは全米小売業協会(NRF)が使用しているものと同じデータセットであり、経済ベンチマーキング向けにアマゾン ウェブ サービス、Databricks、ロンドン証券取引所グループからも入手可能である。



