ディール(取引)が最も見栄えよく映るのは、クロージングを迎えた当日だ。ファンドが設立され、プレスリリースが配信される。アンカー投資家(中核投資家)の名が提示され、法的な構造(リーガル・アーキテクチャ)も目的に適合しているとして承認される。
サウジアラビアおよび広く湾岸協力会議(GCC)地域において、10年以上にわたりプライベート・エクイティ(PE)、プライベート・クレジット、ベンチャーキャピタル(VC)の投資構造の構築に携わるなかで筆者が学んだのは、その構造の真価がテストされるのはクロージングの時点ではないということだ。テストされるのはもっと後、主要なポートフォリオ企業が停滞したとき、投資家が予定より早く撤退を望んだとき、ファンド設立時には誰も明確に把握していなかった見解を規制当局が明確化したとき、あるいは契約文書上では決して起きないと暗黙のうちに仮定されていた対立を共同投資家がエスカレートさせた瞬間である。
それこそが、技術的にコンプライアンスを満たしているだけの構造と、戦略的に構築された構造との違いが顕著になる瞬間だ。その時点でミスが発覚した場合の代償は、失われた時間、放棄された選択肢、そして基本事項について合意していたはずの投資家とマネージャー(運用者)の間で損なわれた信頼である。
資金規模と構造の間に潜むタイムラグ
GCCにおける資本投下は、過去5年間で著しく加速した。政府系ファンド(SWF)は運用権限(マンデート)を拡大させている。ファミリーオフィスは受動的な資金配分者から直接投資家へと移行し、グローバルな資産運用会社はオフショア拠点から同地域にサービスを提供するのではなく、域内に現地プラットフォームを設立している。
ファンド組成の規模とスピードは、そこに適用されるストラクチャリング(投資構造の設計)という規律の成熟度を追い抜いていると感じている。これは規制への批判ではない。同地域におけるルール策定は、むしろ同規模の他の法管轄区域よりも迅速に進んでいる。本稿の指摘は、マネージャーや投資家がそのスピードにどのように対応しているかについての観察である。
本来なら戦略的決定であるべき事項が、手続き上の事務作業として処理されるケースがあまりにも多い。別の市場での前回の案件で使ったという理由だけで持ち株会社が選ばれる。ガバナンス権限はオフショアのテンプレートから丸ごと移植される。リターン分配のプライオリティ(分配ウォーターフォール)は、運用ロジックとしてではなく単なる法的条文として交渉される。これらはいずれも、案件の参入時点でディールを台無しにすることはない。だが、ストレス下で構造の真価を問われる事態が発生するまで、静かに問題が蓄積していくのだ。
実際に「亀裂」が生じるポイント
筆者の経験上、どのようなデューデリジェンス(投資調査)のチェックリストよりも確実にストラクチャリングの弱点を露呈させる3つの転換点が存在する。
第一に、投資家間の意見の食い違いである。 ファンドのパフォーマンスが予想通りであれば、足並みをそろえるのは容易だ。しかし、共同投資家が他の投資家よりも早期の流動性(現金化)を望んだ瞬間、あるいはLP(有限責任組合員)が特定のポートフォリオのポジションについて戦略的懸念を抱いた瞬間、契約文書はその状況を解決するか、あるいは悪化させるかのどちらかとなる。同地域で使用されている多くのテンプレート構造は、投資家の意図が一様であることを前提に同意のしきい値やエグジット(出口)メカニズムが起草されているため、適切な解決が図れないケースが多い。投資家の意図が完全に一致するという前提が成立することは、期待されているよりもはるかに少ない。
第二に、規制の明確化である。 GCC全体における規制整備のスピードを考えると、ファンド設立時には真に不透明だったストラクチャリング上の問題が18カ月後に解明されることがある。場合によっては、ファンドの運用期間中に再編(リストラチャリング)を余儀なくされるような形で規定されることもある。持ち株レベルで選択肢を持たずに構築されたビークル(投資主体)にとって、再編はコストがかかり時間もかかる。一方で柔軟性を組み込んで構築されたビークルは、その変化を吸収できる。
第三に、筆者が最も頻繁に目にする「エグジット」だ。 世界的なプライベート・エクイティの保有期間は大幅に長期化しており、その延長理由のかなりの部分は市場環境ではなく、実行上の摩擦によるものだ。GCCにおけるクロスボーダーのエグジットでは、同意の連鎖、規制当局の承認、設立時には効率的だったものの資金回収時には制約となる税務構造などが原因で、予定期間に数週間から数カ月が常態的に上乗せされる。エグジットこそが、ストラクチャー構築時の「つけ」が一気に回ってくる場なのだ。
ストラクチャーを戦略として捉える
筆者が推奨する変化は、手法ではなくマインドセット(考え方)の転換である。ストラクチャリングは、ファンド立ち上げ時のチェックリストの最後の項目であってはならず、ファンドの投資シード(投資仮説)を具体化する最初の表現であるべきだ。投資仮説が「ファンドはポジションを7年間保有し、戦略的売却とセカンダリー市場での売却を組み合わせてエグジットする」というものであれば、ストラクチャーはその運用に対応できるものでなければならない。中核となるLPがファンドの表面上の運用期間よりも早い流動性の選択肢を必要とする可能性があるなら、契約文書は再交渉を要することなくこれを想定したものでなければならない。将来の共同投資ビークルを前提とするなら、持ち株構造はそれらを収容できるものでなければならない。
このように取り組むことで、ストラクチャリングは戦略の記録ではなく、戦略を実現する手段となる。逆のやり方をすれば、最も柔軟性が求められる局面に限って足枷となる制約へと変わってしまう。
これがGCC地域にもたらす意味
GCCの資本市場は、ストラクチャリングの質の差が、ピッチ(投資提案)の良し悪し以上にマネージャー間の差を明瞭に際立たせ始める段階に達している。投資家はファンド関連文書の精査において洗練度を増しており、根本にある枠組みを試すようなサイドレターの交渉に積極的になり、ストレス下でビークルがどのように機能するかに細心の注意を払うようになっている。これは健全な変化だ。ディールのライフサイクルにおいて、ストラクチャリングという規律を本来あるべき前段階へと押し上げるからである。
資本の移動スピードは今後も加速し続けるだろう。それを受け止める構造が、システムのなかで最も遅い部分であってはならない。
※本記事で提供される情報は、投資、税務、財務、法務に関する助言ではない。個別の状況については、有資格の専門家に相談されたい。



