2026年10月19日の週、トランプ米大統領がイーロン・マスクに電話し、ウクライナ軍の作戦に影響していた通信制限の解除を求めたと報じられた。対象となったのは、衛星通信サービス「スターリンク(Starlink)」の軍事向け版「スターシールド(Starshield)」だ。誰が制限を命じたのか。世界で最も強大な権力を持つ米大統領が、なぜテクノロジー企業の最高経営責任者(CEO)に介入を求める必要があったのか。いずれも明らかではない。米上院の常設調査小委員会は10月22日、調査開始を発表した。
明らかなのは、マスクがウクライナの戦争遂行の成否に極めて大きな力を持つことだ。選挙で選ばれていない民間人が、米国の外交政策やウクライナの防衛をこれほど左右できる立場にあるべきではない。マスクはスターリンクを支配し、米政府のものとされるスターシールドにまで支配が及ぶ可能性がある。政府の判断に対して有権者や議会が責任を問う仕組みが損なわれ、政府関係者には責任逃れの余地が生まれる。協力国に対する米国の約束の信頼性が、マスク個人の気まぐれな判断と同レベルまで低下してしまう。
ウクライナ軍の通信基盤となったスターリンク、マスクの判断が戦場に及ぶ
ロシアが2022年にウクライナへ侵攻した2日後、マスクはウクライナでスターリンクを利用できるようにし、通信端末を急送した。マスクは英雄として称賛された。ウクライナへの提供は、マスクの事業にとっても有利だった。スターリンクは急速にウクライナ軍の通信を支える中核となった。2022年秋までには、米国やポーランドなどが端末全体の約85%分と通信接続の約30%分の費用を負担していた。
マスクは間もなく、戦場に関する判断を自ら下すようになった。2022年9月、戦闘が激化することを恐れ、ウクライナ軍がロシアの黒海艦隊をドローンで攻撃できるよう、スターリンクの通信範囲をクリミアにまで広げることを拒んだ。後にマスクは、米国の制裁により、米政府の承認なしにはクリミアで通信サービスを提供できなかったと主張した。ロイターの調査報道によると、同年秋のヘルソン反攻では、前線の一部でスターリンクの通信を停止するようマスクが命じたという。通信停止がウクライナ軍によるロシア軍の包囲を阻む一因になったと報じられている。



