インフルエンサーマーケティングは、この10年で大きく変化した。当初は主に、ブランドが人気のソーシャルメディア上の人物に報酬を支払い、製品を宣伝してもらうものだったが、現在では本格的な商業チャネルへと発展している。クリエイターは、企業が顧客にリーチし、顧客を理解する方法において、長期的なパートナーとなるケースが増えている。
その変化の規模は目覚ましい。Statistaによると、2025年の世界のインフルエンサーマーケティング市場は、前年比35%増となる320億ドル(約5兆600億円)を超えると推定されている。一方、B2B購買担当者の75%が、購買に関する助言を得るためにソーシャルメディアを利用している。
企業にとって、その機会は明白だ。しかし、それを生かすには、クリエイターの選定、管理、効果測定の方法において異なるアプローチが必要になる。
ソーシャルメディアが顧客ジャーニーを変えている
消費者は人生の相当な時間をソーシャルプラットフォーム上で過ごしている。調査によると、平均的な人は「毎週平均18時間36分をソーシャルメディアの利用に費やしている」という。
オーディエンスも劇的に拡大した。Search Engine Landは、ソーシャルメディア利用者数が過去10年で約2.35倍に増えたと報じている。これにより、消費者が製品、エンターテインメント、ブランドを発見する方法は変化した。Deloitteの調査では、テレビ番組、映画、音楽、ビデオゲーム、イベントなどの新しいコンテンツを見つける主な手段としてソーシャルメディアを挙げた人の割合が52%に上った。Z世代では、その割合は73%に上昇する。
だからこそ、クリエイターがこの発見プロセスの重要な一翼を担うようになった理由は明らかだ。ソーシャルメディアでの投稿は、ブランドとの出合いを生み出し、製品のリサーチを助け、最終的には購入に至るかどうかに影響を与え得る。
フォロワー数にとらわれない評価が必要
インフルエンサーマーケティングが成熟するにつれ、企業がクリエイターを評価する方法も変わる必要がある。かつてフォロワー数は、この業界を特徴づける指標の1つだった。しかし、最大のオーディエンスを持つことが、必ずしも最大の商業的影響力を持つことを意味するわけではない。
専門分野で非常にエンゲージメントの高いフォロワーを10万人持つクリエイターは、ターゲット顧客との接点がほとんどない数百万人のフォロワーを持つ人物よりも、特定の企業にとって価値が高い場合がある。したがって企業は、リーチに加えて、オーディエンスの属性、エンゲージメント、コンテンツの質、信頼性、ブランドとの親和性を考慮すべきである。
「その人物のフォロワーは何人いるか」ということ以上に、「その人は、自社のビジネスがリーチすべき人々に影響を与えているのか」と問い始める必要がある。
キャンペーンから商業的パートナーシップへ
もう1つの重要な進展は、単発のスポンサー投稿から、クリエイターとのより長期的な関係へのシフトである。新製品の発表や短期的なプロモーションなどにおいては、取引型のキャンペーンにも依然として役割があると筆者は考えている。しかし、長期的なパートナーシップは、クリエイターに企業、その製品、顧客を理解する時間を与える。また、関連性のないスポンサー投稿の連続ではなく、継続的な関係性を目にするオーディエンスに対して、より大きな信頼性を生み出すことにもつながる。
こうしたオーディエンスへの理解は、特に貴重だ。成功しているクリエイターは、独自の語り口、関心、コンテンツスタイルを中心にコミュニティを築き上げており、フォロワーが何に反応するのかを深く把握していることが多い。したがってブランドは、明確な商業目的を提示しつつ、クリエイターがそれをオーセンティック(本物)な形で伝えられるだけの自由を与えるべきである。
マーケターは、この機会をますます認識するようになっている。HubSpotによると、マーケターの67%が現在インフルエンサーと協業している、または協業を計画しており、60%は2026年にインフルエンサーマーケティングへの投資を増やす見込みだ。予算が増えるなら、商業的な説明責任も高まるべきである。企業は、認知、エンゲージメント、リード、売上、コンテンツ制作、長期的なブランド成長など、パートナーシップに何を達成させたいのかを明確にする必要がある。
クリエイターがもたらすリーチ以上の価値
最大の機会の1つは、単なるコンテンツの配信にとどまらずクリエイターに関与してもらうことにある。成功しているインフルエンサーは、毎日オーディエンスとコミュニケーションを取っている。彼らは顧客が投げかける質問、使う言葉、関心を集めているトレンド、特定のコミュニティ内で生じている不満などを直接目にしている。そうした知見には、真の商業的価値がある。
新製品の発売を準備している美容ブランドを例に考えてみよう。企業がリーチしたいまさにそのターゲット層と長年コミュニケーションを取ってきたクリエイターなら、従来の市場調査に表れる前に、悩みや嗜好、新たなトレンドを特定できるかもしれない。したがって企業は、信頼できるクリエイターをより早い段階から巻き込み、そのインサイトをキャンペーンのコンセプト、メッセージング、コンテンツ形式、さらには製品開発にまで生かすことができる。
その領域に達すれば、両者の関係は単なる「露出枠の買い取り」を超えたものとなる。クリエイターは顧客インテリジェンスの源泉となるのだ。
インフルエンサーマーケティングの次の段階
インフルエンサーマーケティングは、実験的なマーケティング施策ではなく、ビジネス上の1つの専門領域になりつつある。
その次の段階では、規模と同じくらいパートナーシップの質に焦点を当てるべきだと筆者は考えている。企業には、明確な目標、慎重なクリエイター選定、そして意味のある効果測定が必要だ。また、アフィリエイト提携やライブイベントから、製品コラボレーション、顧客インサイトに至るまで、スポンサー投稿を超えてクリエイターが貢献できることについても検討すべきである。
長年にわたり、ブランドは事実上、クリエイターのオーディエンスへのアクセス権を「賃貸」してきた。今ある機会は、ビジネス、クリエイター、オーディエンスの三者にとって、時間をかけて価値を生む関係を築くことにある。自社のマーケティングを見直す際には、より広範な商業戦略のどこでクリエイターが貢献できるのかを検討してみてほしい。



