暗号資産

2026.10.31 07:00

バイナンス「1兆円流出」ハッキング、暗号資産イーサリアムの機能を悪用──北朝鮮系関与か

Sergio - stock.adobe.com

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暗号資産取引所の大手バイナンスで、暗号資産史上最大規模とみられる盗難事件が発生した。初期調査では技術者のノートパソコンが侵害された可能性が浮上したが、その後、複数の侵害箇所が判明した。バイナンスは損失の補填に向け、約1兆円の自社資金を確保したと発表している。

技術者の端末だけでなく複数の侵害箇所が判明

バイナンスは米東部時間2026年10月29日夜、セキュリティー事故による影響額を約63億ドル(約9954億円)と発表した。流出した資産のうち、約30億ドル(約4740億円)をブロックチェーン上で凍結したという。約63億ドルは事故全体の推定影響額で、約30億ドルは凍結できた資産の金額に当たる。

初期調査では、開発・運用を担うエンジニアのノートパソコンが侵害された可能性が浮上した。攻撃者は取引所のサービスを動かすプログラムの実行環境「コンテナ」にアクセスし、不正な出金指示を送ったとみられる。バイナンスは、暗号資産の移動に必要なウォレットの秘密鍵が漏れた証拠は見つかっていないと説明している。

バイナンスは10月30日の追加発表で、ノートパソコン以外にも侵害された箇所が見つかったと明らかにした。共同最高経営責任者(CEO)のリチャード・テンは、技術者1人の権限だけで実行できる攻撃ではなく、複数の段階を経た複雑な攻撃だったと説明した。個々の技術者に責任があるとの判断は示していない。

テンによると、攻撃者はイーサリアムの仕組み「EIP-7702」を利用し、バイナンスのウォレットに外部プログラムの処理を実行させた。バイナンスが通常設けている出金の承認手順を通さず、不正な送金が行われたという。バイナンスは侵入経路の調査を続けており、詳しい技術報告を調査完了後に公表する方針だ。

※編注:EIP-7702(イーサリアム改善提案7702)は、通常のイーサリアムのウォレットが、別のプログラム(スマートコントラクト)の機能を利用できるようにする技術仕様。複数の取引をまとめて実行するなどの用途がある。外部プログラムへ処理を任せるにはウォレットの秘密鍵による署名が必要で、バイナンス社内の出金承認手続きとは異なる仕組み。

暗号資産の追跡を手がけるチェイナリシスは、盗まれた資産を攻撃発生時点で59億ドル(約9322億円)と推計した。2025年2月に暗号資産取引所バイビットが受けた15億ドル(約2370億円)規模の攻撃の約4倍に当たる。

約20分で大半が流出、北朝鮮の攻撃集団の関与を指摘

ブロックチェーン分析企業TRM Labsによると、バイナンスのウォレットから10種類のブロックチェーンを通じて約63億6000万ドル(約1兆49億円)が移された。流出した資産の大半は約20分間で移動した。

TRM Labsは、北朝鮮の精鋭ハッキング集団「TraderTraitor」による攻撃と分析している。チェイナリシスも北朝鮮の関与を指摘した。チェイナリシスの調査では、2026年9月に暗号資産取引所ビットゲットから盗まれた資金が、バイナンスからの流出資産と混在していた。チェイナリシスのCEO、ジョナサン・レビンはXに、北朝鮮は「以前と同じ手口に戻った」と投稿した。

※編注:「以前と同じ手口」とは、北朝鮮系の攻撃集団による暗号資産の窃取や、盗んだ資金の移動が繰り返されていることを指す。今回と過去の事件で、システムへの侵入方法まで同じだったという意味ではない。

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