東京・渋谷で9月2日と3日、ディープテックカンファレンス「TECHNIUM(テクニウム) Global Conference 2026」が開かれた。壇上には、ディープテック投資を切り拓くベンチャーキャピタリストたちが集った。そこで語られたのは、技術という「種」をいかにして「社会を変革する巨大な産業」へと育て上げるかという、泥臭くも切実な構造転換のドラマであった。
日本のディープテックが今、直面する新たな「壁」とは何か。技術者と投資家、そして国家が果たすべき覚悟のかたちを、パネルディスカッション「日本のディープテック投資の現在地:トップティアVCが展望する2026年のトレンドと戦略領域」と、世界的投資家ジェラルド・チャン氏による基調講演「Building the Future of Deep-Tech: What It Takes to Turn Breakthrough Science into Enduring Impact」から読み解く。
「優秀な研究者1人」の限界と経営チームの壁
「この10年で投資環境が拡大する一方、技術をいかに事業や社会とつなげてスケールさせるかが問われている」。オープニングのパネルディスカッションの冒頭、モデレーターを務めたesse-sense代表取締役の西村勇哉氏は、問いかけるように議論の文脈を提示した。
西村氏の言葉通り、過去10年ほどで日本のディープテックを取り巻く風景は激変した。Beyond Next Ventures代表取締役社長の伊藤 毅氏は、2008年にジャフコで大学ベンチャーのチームリーダーを務めていた頃を振り返る。「当時は大学シーズへの資金供給量が年間数十億円程度にとどまり、起業家も投資家も極めて限られていた」。
しかし現在、シード期の立ち上げ資金や大学発ファンドは充実し、起業のハードルは下がった。だが、真の試練はそこから始まる。伊藤氏は「ファンド規模が拡大した現在、投資家にリターンを還元するには、ユニコーンや1兆円規模の企業を育てる必要がある。尖った研究者が1人いれば上場できる時代は終わった。多様な経験をもつ経営チームを揃え、早期から海外展開を見据えなければ勝てない」と語る。技術の優位性だけで押し切る時代は去り、高度な組織構築という新たな「壁」が立ちはだかる。



