経営・戦略

2026.10.30 10:12

「取引内容を理解していない顧客」に対し、事業者が果たすべき責任とは

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どのようなビジネスオーナーも、顧客が知らない何かしらの情報を持っている。先月成立した7億ドル(約1110億円)の和解は、企業がその情報格差を顧客に対して利用したときに何が起きるかを示している。

サブプライム(低所得者層向け)自動車ローンのクレジット・アクセプタンス・コーポレーション(Credit Acceptance Corporation)は9月、40州とコロンビア特別区に及ぶおよそ7億ドル(約1110億円)規模の和解に合意した。この合意は5万5000人以上の消費者を対象とし、6億3000万ドル(約996億円)の債務免除が含まれる。同社のローンの平均金利は38%を超えており、中には100%を超えるものもあった。

ニューヨーク州司法長官は、同社が自社のローンが顧客にどのような影響を与えるかを事前に把握していたと主張した。

ニューヨーク州のレティシア・ジェームズ司法長官の事務所によると、同社は現金、支払い、差押えや競売、賃金差押えによって消費者からいくら回収できるかを正確に予測したうえで、販売店と水面下で取引を結んでいたという。

同社は借り手に何が起きるかを予測し損ねたわけではない。結果を予測したうえで、それに基づいて価格設定を行っていたのだ。

それほどの規模で事業を展開している中小企業はごくわずかだが、同じような立場にある企業は多い。請負業者、ファイナンシャルアドバイザー、保険代理店、複数年契約を結ぶソフトウェア企業、融資を提供するあらゆる事業者は、いずれも顧客が十分に評価できない商品を販売している。経営者は契約書に署名する前に顧客がどれだけ理解すべきかを決定し、社内の他の部門はそれにしたがって販売を行う。

ジョシー・ガルシアは、住宅所有者に代わって住宅用太陽光発電契約の解約手続きを行う会社、ソーラー・エクイティ・ソリューションズ(Solar Equity Solutions)のクライアントサービス担当副社長を務めている。商業改善協会(BBB)によれば、同社の手数料はおよそ1500ドル(約23万円)から7900ドル(約125万円)で、全額返金保証や、手数料を賄う自社ローンも提供している。彼女の顧客は、すでに契約を結び、自宅にソーラーパネルを設置した人々だ。

「顧客が節約できる可能性のある金額を説明することと、実際にいくら支払うのか、システムの所有権は誰にあるのか、状況が変わった場合に何が起きるのかを理解してもらうことの間には大きな違いがある」とガルシアは書面による声明で述べている。

多くの経営者はこの問いに対し、文書化によって答える。書面に記載し、署名をもらって次に進むのだ。しかし、最近成立した別の和解事例は、それが見かけほどの保護にならないことを示している。

連邦取引委員会(FTC)は10月、フランチャイズ加盟希望者を誤認させたとの申し立てをめぐり、武道フランチャイズ本部とその元販売組織との間で185万ドル(約2億9200万円)の和解を成立させた。200人以上の人々が、4万9500ドル(約782万円)以上の加盟料を支払っていた。

欺瞞行為があったとされるのは、連邦法によりフランチャイズ本部が加盟希望者に交付することを義務付けられている「フランチャイズ開示書面(FDD)」である。

FTCによると、同社は既存の店舗が多額の収入を得ていると報告していたが、それらの収入が新規加盟者の店舗で得られる収入を代表するものであるかを知る合理的な根拠を欠いていた。既存の加盟者が運営していた店舗は、新規加盟者が運営することになる店舗とは実質的に異なるものだった。

数字自体は実在する店舗の実際の数字だった。ただし、それは買主が運営することになる事業とは別の事業を描写していたにすぎない。

開示書類の簡素化は答えにならない

明白な解決策は、書類をより短く、より明確にすることだと思える。しかし研究者が実験を行ったところ、それは機能しなかった。

米証券取引委員会(SEC)が簡略化された投資信託の目論見書を導入した際、研究者は新しい要約版と従来の法定書面を比較検証した。その結果、それがポートフォリオの選択に影響を与えたという証拠は見つからなかった。参加者は一部のファンドで課される販売手数料(ロード)を回避できなかった。書類が短くなったことで決断にかかる時間は短縮されたものの、選択内容自体は変わらなかったのだ。

情報開示は裏目に出ることもある。『Journal of Legal Studies』に掲載された2005年の研究によると、偏りのあるアドバイザーからの助言に対して、その偏りが開示されている場合であっても、人々は期待されるほど助言を割り引いて受け取らないことが分かった。また、開示を行ったことでアドバイザーがより誇張しても許されると感じるため、助言の内容がさらに悪化する可能性も示された。

3700人を対象に行われた2026年の実験でも、同様の結果が得られた。利用者をより条件の悪いインデックスファンドへと誘導するAIチャットボットは、人々の選択を29.3ポイントも間違った方向へと変化させた。チャットボットが利害関係を持つ銀行から提供されていることを参加者に伝えても、測定可能な影響は見られなかった。

21年の隔たりがある2つの研究は、同じ結論に達している。利益相反の開示は、人々の意思決定に影響を与えないのだ。

ソーラー・エクイティ・ソリューションズはこの発見の最前線で事業を行っている。同社に相談してくるすべての顧客は、すでに契約に署名し、法律が求める開示を受け、合意した条件を取り消すために今や別の会社にお金を払っている人々だ。ガルシアの見解では、問題が生じているのは「書類に何が書かれていたか」ではなく、「人々が自分は何を買っていると信じ込まされていたか」というギャップにある。

規制当局が求める「本当の価格」の事前提示

規制当局は現在、単なる開示以上のものを求めている。

FTCは9月15日、自動車販売店向けの価格透明性ガイドラインを公開した。そこには、広告に記載する価格は、政府が義務付ける公的費用を除き、消費者が店舗を訪れて実際に支払うことができる最終価格でなければならないと明記されている。

必須の手数料は、広告に表示される金額に含めなければならない。FTCはこれに先立ち、97のディーラーグループに警告書を送付していた。

この違いは経営者にとって重要である。契約書の14ページ目に印刷された手数料は、技術的には開示されている。しかし、現金価格とは別に明記された手数料は避けることができない。顧客の意思決定を変えるのは後者だけであり、事業者に痛手を強いるのも後者だけだ。なぜなら、もはや見せかけの低い価格を広告に出すことができなくなるからだ。

州の訴訟が標的にするのは「書類」ではなく「節約の売り文句」

この傾向が最も顕著なのが住宅用太陽光発電であり、各州の司法長官が今年、相次いで提訴に踏み切った。

オハイオ州司法長官は1月、ユタ州に拠点を置く施工業者を提訴した。同社は購入者に対し、太陽光発電システムによって電気代がゼロになると説明しながら、購入者が約30%の「任意繰り上げ返済」を行わない限り18カ月後に返済額が跳ね上がる20年または30年のローンを組ませていたとされる。購入者の中には勤労所得がほとんどない、あるいは全くない高齢者も含まれており、利用できないはずの連邦控除が受けられると説明されていたと州は主張している。

100件以上の消費者苦情を受け、テキサス州は5月、電気代の節約に関する虚偽の主張やシステムの性能を理由にサンアントニオの業者を提訴した。購入者は約束通りに作動しない設備のローン返済だけを残される結果となった。コネチカット州とミシガン州も同年、太陽光発電業者に対して同様の提訴を行った。

これらの訴訟のいずれも、書類の欠落が争点ではない。契約はすべて署名済みだ。州が問題視しているのは、書類が提示される前に顧客に示されていた金額なのだ。

顧客が知っておくべきこと

経営者が取引をより明確にしたかどうかを検証するための3つの問いがある。

顧客は書類を開くことなく、支払う総額を答えることができるか。最終的にその資産を所有するのが誰であるかを知っているか。そして、売却、引っ越し、または支払いを停止した場合に何が起きるかを理解しているか。

もしいずれの答えにも契約書が必要であるならば、本来販売段階で行うべき仕事を契約書に肩代わりさせていることになる。

自社が時間を費やすべき問題を決めることとは通常、解決にコストがかかる問題を選択することを意味するが、この問題もまさにそうだ。取引内容を完全に説明する事業者は、売上の一部を失うことになる。すなわち、買い手の混乱によってのみ成立していた取引を失うからだ。

ガルシアのクライアントたちの存在は、販売後に説明が行われた場合に何が起きるかを如実に物語っている。彼女の会社はこれまでに5000人以上の住宅所有者を支援し、96件の契約を解約させたと報告している。これらの数字は、一度署名された契約を取り消すことがいかに困難であるかを物語っている。

売り手は常に買い手より多くを知っている

経営者は常に、顧客よりも多くの情報を持っている。

リーダーが決断すべきは、その知識の格差から利益を得るのか、それに逆らって働くのかということだ。規制当局によれば、クレジット・アクセプタンス社は借り手が被る損失を事前に予測し、その予測に基づいてビジネスを構築したという。武道フランチャイズ本部は、正確ではあっても無関係な数字を使って必要な書類を埋めた。どちらも嘘をつく必要すらなかったのだ。

リーダーシップの遺産は、あなたの後に誰がその扉をくぐるかによって決まるが、契約の扉をくぐる者についても同じことが言える。顧客が署名した後にどのような結果を迎えるかによって決まるのだ。なぜなら、企業が実際に何を売ったかを真に知るのは、その時だからだ。

インデックスファンドの実験に参加した人々は、不注意だったから失敗したわけではない。彼らはチャットボットが成果に利害関係を持っていることを告知されていたにもかかわらず、その助言に従った。開示は彼らを守らなかった。だからこそ、その責任は売り手に委ねられているのだ。

(forbes.com 原文)

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