リーダーシップ

2026.10.30 10:04

優れた後継者計画は、リーダーが去るずっと前から始まる

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優れた後継者計画は、リーダーが去るずっと前から始まる

9月末、私は最高人事責任者として約5年間勤めた1Passwordを退職し、取締役およびアドバイザーとしての仕事に専念することになった。この移行に向けた準備を通じて、後継者計画は私にとって極めて個人的な意味を持つものとなった。同時に、人材領域のリーダーとして長年信じてきたことも改めて確信した。後継とは、ある人を別の人に置き換えることではない。組織が次に進むための準備を整えることなのである。

私はまた、経営と取締役会の双方の立場で、CEOの交代や複数の共同創業者の移行など、経営幹部の後継を反対側から管理する機会も得てきた。こうした経験から、最も強固な移行は単発の出来事として扱われるものではないことが明らかになった。それは、意図的なリーダーシップ開発、思慮深いコミュニケーション、そして組織が将来のリーダーシップに何を求めるのかについての明確さの結果なのである。

こうした移行を支援する人事リーダーに向けて、検討に値するいくつかの原則を紹介したい。

想定より早く計画を始める

後継者計画は一朝一夕にはできない。熟慮された移行には、数カ月にわたる計画、社内ステークホルダーや取締役会との接点、顧客や重要な事業判断への関与、そして段階的な責任の委譲が必要となる。

CEO交代では、計画は12カ月前に始まり、その準備期間が大きな意味を持った。正式に発表される頃には、主要なステークホルダーはすでに移行を理解し、次期リーダーを知り、変化への信頼を築く時間を持っていた。その結果、シームレスな引き継ぎが実現した。

私自身の退職についても、同様の時間軸をたどった。直属のチームが差し迫った移行について初めて知ったのは、私が退く1年前だった。それにより、育成、知識移転、コミュニケーションを数カ月に詰め込むのではなく、意図を持って準備する時間を確保できた。

過去の複製ではなく、未来のために構築する

後継者計画で最も陥りやすい誤りの1つは、現職者とまったく同じように動く人物を探すことだ。目指すべきよりよい目標は、複製ではなく、継続性と持続可能性である。

どの組織にも、守る価値のある文化の基盤となる要素がある。1Passwordでは、それは私たちの価値観に表れている。人を第一に考えること、シンプルに保つこと、そして誠実さをもって率いることだ。個々のリーダーが異なる強み、視点、働き方を持ち込むとしても、こうした原則は保たれるべきである。

後継者計画とは、何を引き継ぐべきか、何を進化させる必要があるのかを理解することである。新たなリーダーシップによって文化は必然的に変わるが、会社が築かれた原則に根ざし続けるべきだ。人事リーダーは、組織が次の章で何を必要とするのか、そして次のリーダーがそこへ導く備えを持っているのかを定義する手助けができる。

実際の経験を通じて後継者を育成する

紙の上の後継者計画は、準備のできた後継者と同義ではない。潜在的なリーダーには、その役割を引き継ぐ前に、必要な判断力、文脈理解、信頼を築く機会が必要だ。つまり、重要な意思決定、経営幹部や取締役会との関係、部門横断的なリーダーシップ責任に触れることが求められる。

私自身の移行に向けた準備では、後継者の職務範囲を時間をかけて意図的に広げていった。その担当領域は、人材獲得と分析から、ダイバーシティ、公平性、インクルージョン、帰属意識、文化、人材マネジメント、そして最終的には社内のAI変革にまで広がった。

後継者はまた、私の役割の一部をシャドーイングし、人事チームの全体会議を主導し、専門性を深めるために外部の技術研修も修了した。私はその人物を重要な意思決定に参加させ、文脈やトレードオフを見えるようにし、次第に意思決定そのものを形づくる影響力をより多く与えていった。私が退職する頃には、後継者はすでに人事機能の多くの領域で実務を担っていた。

人事リーダーにとって実践的に問うべきなのは、「この人はこの仕事に就く前に、何を経験しておく必要があるだろうか」ということだ。早い段階でそのギャップを特定し、ストレッチアサインメント、職務範囲の拡大、経験の機会を活用して支援し、埋めていくべきである。

文脈を引き継いだら、一歩退く

後継には、去る側の人間にも求められるものがある。謙虚さだ。退任するリーダーには、特定の意思決定の背後にある経緯から、重要な関係性や組織上の配慮に関する微妙なニュアンスまで、引き継ぐべき貴重な文脈がある。その文脈は後継者が早く立ち上がる助けになるが、支援がすぐに干渉へと変わってしまう地点もある。

去る側は、自分のエゴを持ち込まないようにしなければならない。バトンを渡すとは、後継者が自分とは異なる意思決定をし、異なる伝え方をし、組織の一部を自分ならしない形で作り替えるかもしれないことを受け入れることだ。それは移行が道を外れた兆候ではない。むしろ、新たなリーダーがその役割を自分のものにする力を与えられていることを示している。

一歩退くことは、一夜にして姿を消すことを意味しない。移行期間は、新たなリーダーが新しい役割で自らの立場を確立する間、コーチング、文脈、率直なフィードバックにアクセスできるようにするものだ。後継者は意思決定を担い、退任するリーダーは影の意思決定者ではなく、相談相手として機能すべきである。人事リーダーは、早い段階で境界線を設定し、両者の認識がそろっていることを確認することで支援できる。

後継者計画を継続的なリーダー育成の規律とする

後継者計画は、経営幹部が退職や引退を人事に伝えたときだけ始めるべきものではない。組織が人材を育成し、責任を分配し、時間をかけて人々をリーダー職に備えさせる方法の中に組み込まれているべきだ。

人事リーダーにとって、それは重要な役割を定期的に特定し、過度の知識や権限が1人に集中している場所を理解し、潜在的な後継者が本当に準備できているのかを検証することを意味する。仮定の状況ではなく実際の経験を軸に育成計画を構築し、会社の戦略が変わるたびに見直すべきである。

ただし、後継者計画は人事だけのものにしてはならない。1Passwordでは、経営幹部に対し、私たちの中核的価値観に沿って将来のリーダーを育成し、後継準備を進めることが求められている。個人の枠を超えて、顧客、会社、チームのために意思決定を行うという価値観である。

私は上級リーダーに対してよくこう尋ねる。「あなたの代理は誰か」。言い換えれば、あなたが不在のときに誰が代わりに入れるのか。あなたの役割、優先事項、より広い事業について十分に理解し、あなたがいない場で意思決定できるのは誰なのか。答えが明確でないなら、それは今すぐ注意を向けるべきリーダーシップ開発上のギャップを示している可能性がある。後継の問題になる前に対処すべきだ。

リーダーのレガシーとは、自分が去ったときのまま、すべてが正確に続くかどうかではない。組織と次世代のリーダーが、その人なしでも成功する準備ができているかどうかである。

(forbes.com 原文)

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