経営・戦略

2026.10.30 09:59

事業成長におけるコンプライアンスの新たな役割

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ビジネスリーダーが成長について語るとき、その議論は通常、製品、顧客、市場、チャネルを中心に進む。財務や税務が議論に入ってくるのは、企業が進むべき方向を決めた後であることが多い。

だが、そのモデルはもはや企業の成長の実態を反映していない。

デジタル化が進むグローバル経済において、税務・コンプライアンス上の義務を理解し、管理する企業の能力は、市場参入、製品投入、新たな販売チャネルの追加のスピードに直接影響し得る。つまり財務は、企業の成長エンジンの中核を担う存在になっている。

何十年もの間、コンプライアンスはおおむね成長の後を追うものだった。企業が商業上の意思決定を行い、その後に財務・税務チームが付随する義務を整理するという流れである。しかし、そうした義務はますます、意思決定が行われる前に理解され、企業がそれを実行する過程で管理される必要が出てきている。

これは単なるプロセス変更にとどまらない。企業がコンプライアンス基盤に何を期待すべきかを変えるものだ。次世代のコンプライアンスシステムは、起きたことを記録するだけでなく、次に起きることを企業が予測し、人間の指示の下で行動を起こせるよう支援するものであるべきだ。

コンプライアンスは取引に近づいている

この変化を促している要因はいくつかある。規制変更の量とペースは増え続けている。米国では、売上税および使用税の税率変更が毎年数千件発生している。世界的には、デロイトの「2026 Global Tax Policy Survey」で、税務・財務リーダーの84%が、今後2〜3年で公的な税務開示および報告要件が増えると予想していることが明らかになった。

同時に各国政府は、電子インボイスやデジタル報告義務を通じて、コンプライアンスを取引により近いところへ移している。ベルギー、ポーランド、フランス、ドイツなどがこうした要件を導入または拡大しており、追随する国も増えている。政府は税務情報について、構造化され、デジタル化され、よりリアルタイムに近い形で利用できることをますます求めている。これは事業拡大の計算を変える。

新市場への参入はもはや、顧客需要、流通、人材、運営コストだけの問題ではない。リーダーは、その市場における税務、インボイス、登録、報告の要件を自社システムが支えられるかどうかも把握する必要がある。ローンチ後に発見されたコンプライアンス上の問題は摩擦を生む。一方、ローンチ前に理解されたコンプライアンス要件は、事業が計画に織り込める要素となる。

税務当局自身もまた、技術的に高度化している。OECDは、税務当局の70%超が、コンプライアンス、納税者サービス、リスク評価などの領域を支援するためにAIを活用していると報告している。企業は、取引の相手側にあるシステムが今後もより速く、よりスマートになっていくことを前提にすべきだ。自社の基盤も同じように進化する必要がある。

企業はコンプライアンスを処理する段階から予測する段階へ移行しなければならない

こうした環境で事業成長を支えるには、起きたことを教えてくれるシステムから、次に何が起きるべきかを判断する助けとなるシステムへ移行する必要がある。CFOは、増え続ける義務を税務・財務の専門家だけで処理できると期待すべきではない。そこでエージェント型AIが構図を変え得る。

生成AIは、情報へのアクセスと情報作成のあり方を変えた。エージェント型AIはさらに先へ進む。エージェントは情報を分析し、定義された複数段階のプロセスを実行し、定められた範囲内で行動を起こし、判断が必要な場面では人間を関与させることができる。

税務・コンプライアンスのワークフローはこのモデルに特に適していると筆者は考えている。この業務は、膨大なデータ、絶えず変化するルール、反復可能なプロセス、そして正確性と説明責任が重要となる意思決定を組み合わせたものだからだ。

エージェントは、企業の事業範囲に照らして規制変更を継続的に監視し、新市場参入に必要な要件を整理し、決算時ではなく取引により近い段階で例外を特定できる可能性がある。目的は専門家をプロセスから排除することではなく、判断、解釈、リスク評価、事業上の意思決定という、最も価値を生む領域に専門知識を集中させることにある。

自律性が高まるほど、より大きな信頼が必要になる

信頼を伴わないエージェント型自動化は、それ自体では成長上の優位性を生まない。

インテリジェントなシステムに与える責任が大きくなればなるほど、検証済みデータ、明確な責任体制、適切な人間による管理、ガバナンスに求められる水準は高くなる。

以前に筆者が書いたように、こうした信頼の基盤は、財務におけるエージェント型AIに不可欠である。誤った判断が財務、規制、評判に関わる結果を招き得る税務・コンプライアンスにおいては、それは妥協の余地がない必須条件である。

組織は、情報がどこから来たのか、どのように判断が下されたのか、エージェントに何を行う権限があるのか、そしていつ人間が介入する必要があるのかを把握していなければならない。

この原則は、AIが業務を実行し始めるにつれて一段と重要になる。システムが行動を推奨することと、企業に代わってその行動を取ることとでは、求められる信頼のレベルが異なってくる。

コンプライアンスはいまや成長を支える能力である

現代のコンプライアンス機能は、今なお組織を守り、その義務を果たす役割を担っている。しかし同時に、意思決定プロセスのより早い段階で複雑性を管理可能にすることで、事業がより速く動くことを支援できるようにもなっている。

そこから、財務リーダーにとって新たな問いが生まれる。意思決定が行われる時点でコンプライアンスに関するインテリジェンスが利用でき、インテリジェントなシステムが次に起きることの実行を支援できるなら、事業は何を変えられるのか。

新市場をより速く評価できるのか。より大きな確信を持って製品をローンチできるのか。何カ月にも及ぶ追加の手作業を生むことなく、新たなチャネルを通じて拡大できるのか。専門家が自らの判断を要する課題に集中する時間を増やせるのか。

これらは成長に関わる問いである。これにうまく答える企業は、コンプライアンスの複雑性をなくしたわけではない。しかし、それを吸収する力においてはるかに優れている。

コンプライアンスはもはや、成長の後を追う義務ではない。それは成長を支えるインテリジェントな基盤の一部になりつつある。

(forbes.com 原文)

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