米テキサス州で起こることの影響は、テキサス州内だけにとどまらない。同州の各種選挙戦に投じられている巨額の資金を見れば、一目瞭然だ。中間選挙の上院選で民主党のジェームズ・タラリコと共和党のケン・パクストンが繰り広げる熾烈な闘いには、州外から数億ドルもの献金が集まっている。政治に明るい人なら、何も驚くことではないだろう。
その理由を理解するには、2013年まで遡る必要がある。当時、政治活動団体フリーダム・ワークスが主催した「リストア・リバティー(自由を回復せよ)」というイベントがあった。フリーダム・ワークスは表向き超党派を標榜していたものの、実際には共和党寄りの姿勢が顕著だった。リストア・リバティーの集会では、テキサス州の意義と、同州を共和党の地盤である「赤い州(レッドステート)」として維持することの重要性について、パネルディスカッションを含めてかなりの時間が割かれた。もしもここで牙城が崩れれば、全米の共和党に影響が及ぶことになるからだ。
背景には、テキサス州に割り当てられた選挙人の数が、人口の流入に伴って増加している事実がある。同州を「圧倒的に真っ赤な州」として保つことで、これまで共和党は莫大な資金と人的資源を「紫色の州(パープルステート)」、すなわち民主党と共和党の支持率が拮抗する激戦州や、より民主党が優勢な「青い州(ブルーステート)」へと振り向けることができていたのである。
もし共和党がテキサス州をしっかり掌握できなくなれば、州知事の座はもちろん、現在共和党が独占している上院の2議席や、下院の38議席における過半数維持も危うくなる。そればかりか、本来なら他州に投入できたはずの貴重な人的・財政的資源がテキサス州の地盤防衛のために浪費されることになってしまう。
ここで登場するのが、予測市場である。選挙の趨勢を占うにあたり、世論調査では実際に電話に出た有権者がまもなく行われる選挙についてその場で考えて答えた意見をこまめに追跡する。一方、予測市場はこれと異なり、政治に詳しい人や関心が高い人だけでなく、当該地域の選挙事情に関する自分の知識や見解を身銭を切って証明することを厭わない人々が提供する知見も反映される。ただの意見は安上がりだが、金銭が絡んだ知識には価値が生まれる。資金が動くことによって、重要な市場シグナルが浮かび上がってくるのだ。これはギャンブルではない。



