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2026.11.01 14:15

「最初に高いハードルを越えよ」鬼塚喜八郎 贈りたくなる言葉集 vol.15

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正解のない時代に「未来をひらく」仕事をなし得たビジネスリーダーたちは、自らの行動からどんな言葉を紡ぎ、何を導き出したのか。

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本連載ではForbes JAPAN編集長 藤吉雅春が、「名言こそ未来に伝えるべき共有物だ」をコンセプトに、Forbesが過去取材したビジネスリーダーたちの名言をひもとき、われわれの「今日の行動」に転換すべく読み解く。

第15回の今回は、アシックス創業者 鬼塚喜八郎の言葉を紹介する。

※なお藤吉雅春 編著『Forbes JAPANが選ぶ 未来をひらく言葉』(だいわ文庫)は、Forbesが過去取材したビジネスリーダーたちの名言の傑作集である。併せてぜひ参照されたい。

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オニツカタイガーの神話、「虎は眠りから目覚めた」

最初に高いハードルを越えられれば、その後のハードルもどんどん越えられる

──鬼塚喜八郎


2017年当時、アシックスの社長だった尾山基(その後、会長を経て、相談役に)を取材した際に聞かされたアシックス創業者、鬼塚喜八郎の言葉だ。なぜ尾山が義父である創業者のこの言葉を取材で語ったのか、その理由を紹介しよう。

創業者の娘婿として入社した尾山を待っていたのは、手加減抜きの高いハードルだった。「親族は後継者にしない」という創業者の冷徹な言葉とともに送り込まれたのは、30億円もの赤字を出したばかりの米国法人。1986年のことだ。

「正直、決して気持ちの良い転勤ではなかった」という。しかし、マネジャー兼ディレクターとして90年までの駐在中、一度も売上げを落とさなかった。ところが、帰国後に待っていたのは次のハードルだ。

当時、社の本流ではなかったウォーキング事業部に配属された。

そこで尾山はランニングシューズの機能性をビジネスシューズに生かした「RUNWALK」を開発するなどして、9年で30億円から94億円にまで業績を伸ばした。

一方、アシックス全体としては1998年度まで7期連続の赤字を計上、株価も一時は60円まで落ち込む事態に陥っていた。国内でのスキー・ゴルフ用品市場の衰退と学生向けアスレチック用品の不振が主な理由だ。95年には鬼塚が経常赤字の責任を取り、代表権を返上している。

「ナイキがエアマックスでスニーカーの一大ブームを巻き起こしていたとき、こちらは倒産危機ですから。『アシックスはスリーピング・タイガー(眠る虎)だ』とまで揶揄されて、非常に悔しかったですね」

尾山は2001年、大赤字を出していた欧州の法人社長に就任し、翌年に往年の名作「オニツカタイガー」をブランドとして復刻発売した。オニツカタイガーは天然皮革を使うなど素材や質にこだわり、高級ブティックやセレクトショップに販路を限定した。

決め手は2003年に公開された映画『キル・ビル』だ。主演女優のユマ・サーマンが黄色のオニツカを履いたことから、海外で爆発的にヒットした。虎は完全に眠りから目覚めたのである。

オニツカタイガー復刻で大成功を果たした尾山が最も影響を受けたのは、やはり創業者の鬼塚の言葉だという。

「鬼塚は1949年に個人事業でスタートし、翌年には当時最もつくるのが難しいといわれたバスケットボールシューズ(バッシュ)を発売しているんです。『最初に高いハードルを越えられれば、その後のハードルもどんどん越えられる』と。しかも当初は問屋にも小売りにも相手にされず、自分で全国の競技会場を営業したというんですから、並々ならぬ企業家精神ですよ。振り返れば、自分も高いハードルに次々と挑戦させてもらったんだと思います」

取材時の2017年、アシックスは売上げ4000億円を突破。それから時を経て、昨年2025年12月期、アシックスの売上げは8109億円。倍以上の爆発的成長が続いている。

7期連続赤字という「最初の高いハードル」を越えた会社は、その後のハードルを次々と越え続ける。

『Forbes JAPANが選ぶ 未来をひらく言葉』(藤吉雅春編著、だいわ文庫)
『Forbes JAPANが選ぶ 未来をひらく言葉』(藤吉雅春編著、だいわ文庫)

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