資産運用

2026.10.28 09:56

貯め上手の落とし穴 ― 使えない資産という逆説

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私たちの多くは、貯蓄上手であることが経済的成功の土台の1つだと教えられてきた。収入より支出を抑え、不要な借金を避けながら、退職後に向けた拠出を最大化するという考え方である。それを一貫して実践し、目先の満足を先送りすれば、将来の選択肢は増える。

これは良い助言だが、それを極めて忠実に実践する人には、思いがけない問題が生じることがある。人によっては、その「将来」がいつまでも訪れないのだ。

筆者は、何十年もかけて資産を築き、いざ退職を迎えて初めて、それを使うことが驚くほど難しいと気づく多くの顧客と向き合ってきた。旅行に出かけ、これまでの生活水準を維持し、子どもや孫を支援し、ずっとやりたいと思ってきたことに取り組むだけの資金は十分すぎるほどあるかもしれない。

ファイナンシャルプランを見ても、彼らの状況は極めて良好だ。しかし、資産形成を後押ししたその同じ習慣が非常に強く身についてしまっているため、数字上はまったく問題ないと示されているにもかかわらず、その行動を変えることに苦痛を感じてしまうのだ。

貯蓄が「アイデンティティ」の一部になるとき

私たちは貯蓄を金銭的な行動として捉えがちだ。しかし時が経つにつれ、それがその人のアイデンティティの一部となることがある。年々、将来のために積立を行い、老後資金が増えていくのを見守ることが成功だと捉える人は多い。口座残高が増え続けることは前進を意味するかもしれないが、その口座から支出するとなると、それは逆の意味を持ってしまう。

給与の受け取りが止まり、引き出しが始まる局面への移行は難しい。成功しているファイナンシャルプランでは、意図的に資産を減らしていくことが含まれる場合があるが、心理的にはそれが本質的に間違っているように感じられることがある。

この問題にはさまざまなパターンがある。ある顧客は、毎月数千ドルを通常の生活費として難なく支出できる一方で、家族旅行のためにポートフォリオから追加で1万5000ドル(約237万円)を取り崩すことには強い抵抗を感じるかもしれない。別の顧客は、何年も前からキッチンの改装を計画し、十分な資金があるにもかかわらず延期し続けている。問題は資金力の有無ではなく、「許可」を出せるかどうかにあるのだ。

「許可のギャップ」

筆者はこれを「許可のギャップ(permission gap)」と呼んでいる。これは、金銭的にお金を使う能力があることと、感情的に抵抗なく使えることとの間にある隔たりのことだ。ファイナンシャルプラン上は、大きな旅行に出かけたり、子どもの住宅ローンの頭金を支援したり、長期的な安心を損なうことなく体験により多くのお金を使えると示されるかもしれない。しかし、どれほど洗練されたプランニングソフトでも、何十年にもわたる条件づけを自動的に解除することはできない。

ここで、ファイナンシャルプランニングは投資リターンや引き出し率以上のものになる。筆者がますます価値を感じている問いの1つは、単純に「今、そのお金は何のために貯めているのか」である。人生の早い段階では、答えはたいてい明確だ。退職、大学進学、住宅、経済的自立などである。しかし、それらの目標に十分な資金が確保されると、答えは曖昧になり得る。

資産を積み上げ続けること自体が問題というわけではない。実際、相続人にできるだけ多くを残したいと心から望む人もいる。世代を超えた資産形成は、まったく正当な目標である。重要なのは、その蓄積が意図的なものなのか、習慣によるものなのかという違いである。

待ち続けることのコスト

ファイナンシャルプランニングは当然ながら、市場の下落、インフレ、医療費、長寿といったリスクに焦点を当てるが、「待ちすぎることのリスク」が考慮されることは滅多にない。65歳の人が今後長年にわたって旅行や活動を楽しめると期待するのは妥当だが、そのすべての年で同じ機会が得られるとは限らない。

65歳では魅力的に聞こえる旅行も、80歳になれば疲れるものに感じるかもしれない。長年にわたり家族の思い出を作る別荘も、人生の後半に購入すれば価値が小さくなる可能性がある。成人した子どもの人生を実質的に変えられるタイミングで援助することは、何十年も後に同じ金額を遺産として残すよりも意味が大きい場合がある。お金には時間的な次元があり、財務予測はそれを必ずしも十分に捉えられるわけではない。

無謀にならずに使う

だからといって、退職者が経済的成功をもたらした習慣を捨てるべきだという意味ではない。それと、自分の資産を楽しむ許可を自分に与えることの間には、大きな違いがある。

支出を増やす前には、持続可能なキャッシュフロー、想定される寿命、医療費、税金、市場リスク、将来的な介護ニーズの可能性を理解することが重要だ。大きな支出の意思決定は、ファイナンシャルプラン全体の文脈の中で評価されるべきである。したがって、目的は支出のための支出を促すことではなく、「恐れ」によって意思決定が左右されていないかを確認することにある。

経済的成功を再定義する

金融業界は、人々が資産を蓄積する手助けに非常に長けている。私たちは口座残高、投資パフォーマンス、純資産といったものを測定する。しかし、望む人生を支えるのに十分な資産を築いた後は、そうした指標の有用性は低下する。

その時点で、対話の焦点を変える必要があるかもしれない。「このポートフォリオをどう最大化できるか」だけを問うのではなく、「このポートフォリオは、それが支えるためにある人生をどう最大化できるか」と問う方が生産的である可能性がある。

それは、もっと旅行することかもしれない。ずっと住みたいと思っていた場所に移ることかもしれない。自分が生きているうちに子どもを支援し、その影響を見届けることかもしれない。大切に思う団体を支援すること、あるいは自分のために少し多く使うことへの罪悪感を取り除くことかもしれない。そして人によっては、それでもなお相当な遺産を残せるかもしれない。

ここに唯一の正解はない。重要なのは、その答えが何十年も前に身につけた金銭習慣ではなく、実際に自分が大切にしている価値観を反映していることである。資産形成を助けた規律は大いに評価されるべきだが、やがてお金は「蓄積するもの」から「使うもの」へと卒業しなければならない。

成功するファイナンシャルプランは、単に「自分はいくら持てるのか」に答えるだけであってはならない。「一体何のためにあれほど貯蓄してきたのか」という問いに答える手助けとなるべきものなのだ。

ここで提供されている情報は、投資、税務、または財務上の助言ではない。個別の状況に関する助言については、資格を持つ専門家に相談すべきである。

(forbes.com 原文)

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