Forbes JAPAN 2026年12月号は、AIで人的資本を拡張している「本当に強い会社」2026特集。今回、Forbes JAPANは東京証券取引所に上場している企業のうち、分析に必要なデータを取得できた3,531社を対象に、AIを自社の売上高や利益に結びつける「実装力」を評価する「拡張人的資本ランキング」と、AIやDXへの投資が将来の収益化につながる可能性の高さを評価する「AI/DX先行投資力ランキング」を作成した。AI時代に、「本当に強い会社」とは、どんな企業なのか。上位企業を率いる経営者たちの言葉と具体的な取り組みから、その条件を解き明かす。
1990年代からエンジニアリング業界の変革の必要性を認識し、DX構想を掲げ続けてきた千代田化工建設。経営危機を乗り越えた今、同社が掲げる「稼ぐ力を高める3つの領域」とは。
「ようやく技術が追いついてきた」。千代田化工建設(以下、千代田)社長の太田光治は、同社が長年掲げてきたDX戦略の現在地をこう評する。AIが実用に耐えうる水準に達した今、構想は実装の段階に入ったという。
総合エンジニアリング企業の千代田が、次世代型の「賢いプラント」を実現するために「iPlant」構想を掲げたのは1990年代のことだ。手始めに、今のAIの走りともいえるニューラルネットワークの開発に着手した。2000年代にはAIを活用した学習ツール「Ski l lTran」(スキルトラン)を築き上げ、10年代前半には化粧品など他業界にコンサルティングサービスを提供したこともある。
16年には、ビッグデータ解析やAIを通じて顧客のプラントの価値を最大化するための部署「AIソリューションユニット」を新設し、AI関連のベンチャー企業であるグリッドと業務提携を締結した。協業を通じて生まれたAI技術は中東や東南アジアの液化天然ガス(LNG)プラントに導入され、LNGの増産などに貢献した。
同社の強みは、エンジニアリング力とシミュレーション構築力のかけ算にある。化学工学領域に特化した「AIプロセスシミュレータ」を用いて、プラントに直接手を加えることなく、温度や圧力を変えると生産量が何パーセント増えるかなどを導き出す。
「当社のシミュレーションを構築する力は、ほかのエンジニアリング会社よりも一歩進んでいると自負しています」
では、これらの技術をどのように「稼ぐ力」につなげるのか。それを一枚絵にしたものが、26年1月に発表した「Chiyoda DX Initiative」(以下、DXイニシアチブ)である。
DXイニシアチブは3つの事業領域からなる。ひとつ目が「EPC(設計・調達・建設)事業改革」で、「Digi tal EPC Platform」を使ってEPCの全工程をデジタル技術で統合し、最適化を図る。ふたつ目が「社会実装」だ。プロセスをシミュレーションする技術を活用して、製薬メーカーの新薬の製造過程を安定させたり、顧客のカーボンニュートラルの加速をサポートしたりする。
3つ目が「操業支援」だ。ここでは自社で開発した操業支援ソリューション「plantOS」が、顧客のプラントの運転や保守、生産性の強化を支援する。顧客がプラントの構想を立てる段階から伴走し、プラントの一生、あるいは事業の一生になくてはならないパートナーになることを目指す。



