アンソロピックの売上高は急増、巨額の純損失の裏で営業成績は改善
アンソロピックの売上高は、2024年の3億8600万ドル(約608億円)から2025年には約46億ドル(約7240億円)へ急増した。2026年上半期には163億ドルに達し、前年同期の約14倍となった。上場に向けた届出書で示された成長率は、AI事業の勢いを物語る。
約12兆7060億円の純損失の大半は、なぜ現金支出を伴わないのか
2026年上半期の純損失807億ドルのうち、約724億ドル(約11兆4000億円)は、主に株式に転換できる金融商品に関する非現金の会計調整によるものだ。アンソロピックの企業評価額が急上昇し、資金調達に使われた金融商品の価値も高まったことが背景にある。
アンソロピックは過去に、将来同社の株式へ転換できる金融契約を通じて資金を調達していた。企業評価額が上がるにつれ、金融商品の保有者が将来受け取れる価値も増えた。会計規則上、アンソロピックは増加分を費用として計上しなければならなかったが、事業運営のために同額の現金を支払ったわけではない。
金融商品の価値上昇がまったく実体のない損失というわけでもない。将来、金融商品が株式へ転換されれば、既存株主の持ち分が希薄化する可能性がある。それでも、807億ドルという純損失だけを見ると、実際の事業運営の損益以上に経営成績が悪いように映る。
アンソロピックは事業運営に807億ドルの現金を使ったわけではないが、巨額の会計上の損失は、企業評価額の上昇に連動して金融上の義務が重くなることを示す。高い評価額で資金調達を重ねると、既存株主の持ち分の希薄化や、将来の精算義務などの負担が生じ得る。
2026年第2四半期は営業黒字、売上高の伸びがインフラコストを上回った
2026年上半期の営業損失は6億9300万ドル(約1090億円)で、前年同期の21億ドル(約3310億円)から縮小した。第2四半期だけを見ると、前四半期の17億ドル(約2680億円)の営業損失から一転し、9億7400万ドル(約1530億円)の営業利益を計上した。
第2四半期の売上高は116億ドル(約1兆8260億円)となり、第1四半期の47億ドル(約7400億円)から大幅に増加した。売上高に比例して計算資源の費用が増えたわけではなく、事業規模が拡大するほど採算が改善する「規模の経済」が働き始めている。
2026年第1四半期から第2四半期にかけて、売上高は約144%増加したが、計算資源とインフラの費用の増加率は約65%にとどまった。売上高の伸びが費用の伸びを上回り、収益の増加が利益の改善につながる「営業レバレッジ」が強まっている。持続可能なビジネスモデルを求める投資家には好材料だ。
ただし、1四半期の黒字だけで長期的な収益力が証明されたわけではない。新たな計算能力が使えるようになると、関連費用が急増する可能性がある。対応する顧客収入が生じるよりも、設備に関する費用がかなり早く発生することもある。
それでも、AI事業の採算改善が、高度なモデルを開発・提供するための費用増を上回る可能性はある。問われるのは、その改善を継続できるかどうかだ。


