「大切なのは経験にふたをすること」
湖池屋、味の素と大手食品メーカーをわたり歩き、マーケターとして実績を重ねた野間和香奈が口にしたのは、意外な言葉だった。
キャリア志向が強いタイプではないと本人は言う。「人と心がつながる場を探していたら」、たどり着いたのがアサヒビールだった。当初宣伝部に配属されたが、2カ月後に任命されたのは会社の中核を担うビールマーケティング部の部長。思わぬ抜擢に驚きながらも、「酒類業界未経験の自分に武器があるとすれば、人への興味」と謙虚に自己分析する。
仕事の喜びを知ったのは湖池屋時代。子育て中に調味料に興味をもち食塩不使用のポテトチップスを商品化したところ、「お客様から『塩分制限中の祖父と一緒に食べられた』という手紙をいただいた」。子どもの健康を考えて開発した商品が、別の課題解決につながった。仕事を通して社会に貢献できているという実体験が、今も原動力になっている。
10月からの酒税法改正で注目されるビール業界において、現在は会社に新たな価値をもたらす新ブランドの創出を目指す。他社で数々のヒット商品を生み出してきた野間だが、その成功体験にはふたをして、周囲から学ぶ姿勢に徹している。
「スーパードライを開発したOB社員にも話を聞きました。受け継がれてきた歴史のなかに、自分が存在する“意味”を考えさせられます」
のま・わかな◎1981年、広島県生まれ。東京農工大学卒業後、2004年湖池屋入社。約20年にわたりブランド戦略策定等を行う。22年に味の素に転じ、Z世代事業創造グループ長。24年アサヒビール入社、ビールマーケティング部長などを経て9月より現職。



