利用者が用事を任せられる、メタのAI「Muse」
メタが目指すのは、利用者それぞれを支える高度なAI「パーソナルスーパーインテリジェンス」だ。メタはAIアシスタントとAIエージェントのプラットフォーム「Muse」を構築している。利用者がコンテンツを見るだけでなく、AIの助けを借りて実際の用事も済ませられるようにする構想だ。Museは2026年10月23日から日本でも提供されている。
メタの最高経営責任者(CEO)マーク・ザッカーバーグは「Museを通じて、すべての人にパーソナルスーパーインテリジェンスを届ける」と語った。エヌビディアのCEOジェンスン・フアンは、AIエージェントを新しいコンピューティングの仕組みだと説明した。ソフトウェアが人の目標を理解し、推論し、必要なツールを使い、人に代わって仕事を完了する仕組みだ。
新しいアプリを普及させずに、数十億人へAIを届けられる強み
メタの優位性は、世界中の利用者にサービスを届ける仕組みがすでにあることだ。2026年9月時点で、メタのアプリを少なくとも1つ毎日使う人は36億4000万人に上った。
Museの提供開始から数週間で、米国とカナダの利用者数は1000万人を超えた。買い物は、まもなくMuseの最も多い用途になった。メタは、新たなアプリを世界中に普及させるところから始める必要がない。すでに数十億人が会話や投稿の閲覧、買い物に利用するアプリへ、Museを組み込めるからだ。
メタはアプリ内のつながりと外部サービスを生かし、Museの用途を広げる
メタが自社サービス内に利用者を囲い込む仕組みも、AI事業では重要になる。メタは利用者のアカウント情報、人間関係、メッセージ、投稿の表示内容を管理し、外部サービスと接続する手段も増やしている。
Museはメタのアプリ内で築かれた人間関係や外部サービスとの接続を利用し、決済、仕事の効率化、予定管理、買い物、企業との連絡などに役立つ可能性がある。メタによると、外部サービスとの連携先企業からは、決済や業務効率化を含む個人・企業向けのさまざまな用途でMuseが使われているとの報告が寄せられている。
広告以外に、AIが支援する取引からもメタは収益を得られるか
メタにとって、より大きな事業機会は、利用者の注意を引いて広告を見せるだけでなく、利用者が用事を済ませるために費やす時間からも収益を得ることだ。メタはこれまで、利用者が自社アプリで過ごす時間を広告収入に変えることで事業を築いた。AIエージェントは、広告を中心とする収益モデルを広げる可能性がある。
Museが旅行の計画や商品の購入手続きを支援すれば、メタは広告を表示するだけでなく、取引そのものからも収益を得られる。メタが提供する企業向けの顧客対応AI「Meta Business Agent」は、毎週200万社以上が利用している。Meta Business Agentを通じた会話も、週3000万件を超える。
半導体3社がメタ株の購入に関心、エヌビディアはMuse開発でも協力する計画
2026年10月の株式売り出しは、半導体メーカーがメタの成功を望む理由も示している。エヌビディアは、今回の売り出しに30億ドル(約4730億円)を投資する予定だ。AMDも10月27日に、10億ドル(約1580億円)の投資方針を発表した。メタの提出書類によると、エヌビディア、AMD、ブロードコムの半導体3社は、合計で最大50億ドル(約7890億円)分の株式を購入する意向を示した。
エヌビディアとメタは、Museの開発をめぐる協業も拡大する計画だ。エヌビディアのVera Rubinチップ、Vera CPU、Spectrum-X Ethernetのネットワーク技術、BlueField-4技術の利用拡大も含まれる。
投資家にとって重要なのは、メタが他社の追随を許さないほど大きな日々の利用者基盤を生かし、個人向けAIの標準的なプラットフォームを築けるかどうかだ。実現すれば、メタは利用者が費やす時間だけでなく、何をしようとしているかという意図や実際の取引も、今まで以上に自社サービスへ取り込むことになる。


