カルチャー

2026.10.28 15:45

なぜ200年前のシルクに勝てないのか 細尾真孝と北野宏明が探る「革新の原点」【第1話】

飛べない虫が吐く、一本の糸

人類は、この虫を深く作り変えてきた。六千年をともにするうちに、蚕は野生を失った。

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「(…)人類と六千年の歴史の中で、どんどん蚕は人と共に生きていく中で、今はもう孵化しても飛べない、そのまま死んでしまうということになります。(…)基本的に今いわゆる養蚕でされている蚕っていうのは、もうそこから飛んでしまうと飛ぶことができない。つまり今そこで、生が終わってしまうと」(Session 2, 07:29)

繭を破って羽化しても、もう飛べない。そこで生が終わる。野山の原種は今も飛ぶが、養蚕の蚕は、人間と歩むなかで翅を失った。人間がここまで深く生にかかわり、設計してきた生き物。その虫が吐く一本の糸が、なぜ江戸の昔のほうが美しかったのか。

第1話のアノマリーは、ここでもう一段深い問いに変わる。技術は進歩した。蚕は人間が完全に管理できる生き物になった。それなのに、糸は退化した。進歩と退化が、同じ百年の中で同時に起きていた。人間がコントロールを強めたまさにその過程で、何か大切なものが──あの「均一でない美しさ」が──こぼれ落ちていた。 その、こぼれ落ちたものを拾い直す旅が、ここから始まる。

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*本記事について
本記事は、北野宏明が主宰する「The Discovery Engine」から転載したものである。北野は本シリーズの発案・監修を務め、文章の構成や引用の検証などを人間と複数のAIが協働して行っている。

転載元:The Discovery Engine「第1話 アノマリーからの発見」 © HOSOO Collective & The Discovery Engine, 2026


参照文献

学術文献
1.Kuhn TS. The Structure of Scientific Revolutions. Chicago: University of Chicago Press (1962). 〔邦訳:トーマス・クーン著、中山茂訳『科学革命の構造』みすず書房、1971年。新版:青木薫訳、みすず書房、2023年、ISBN 978-4-622-09612-2〕

媒体・記事
2.WWDJAPAN編集部[「HOSOOとソニーCSLが挑むシルク革命、人間の感性とAIが紡ぐ新しい『美』」](https://www.wwdjapan.com/articles/2328020)『WWDJAPAN』2026年2月(鼎談、モデレーター:水野大二郎・京都工芸繊維大学教授)。
3.Forbes JAPAN編集部[「細尾が純国産シルクを再興へ ― 京都から新たな世界標準を」](https://forbesjapan.com/articles/detail/86759)『Forbes JAPAN』2025年12月。

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