都市で暮らす鳥の存在に私たちが気づくのは、カフェのテーブルにハトが寄ってきたり、カモメが駐車場の上をぐるぐると飛び回ったりと、たまたま視界に入ってきた時くらいのものだ。わざわざ立ち止まって、飛んでいる鳥に目を向けることはめったにない。
しかし、写真家のラグヴァンシュ・チャヴァリはここ3年ほど、そうやって空を見上げてきた。インド南部のハイデラバードに生まれ、現在はカナダで暮らす同氏は、自然や野生動物を専門とする写真家で、スミソニアン協会が発行する雑誌『スミソニアン』や、英紙ガーディアンに作品が掲載されている。
チャヴァリは、「Wings Over Concrete(コンクリート上の翼)」と題したシリーズ作品に継続して取り組んでおり、私たちが見落としてきた光景を切り取っている。同シリーズは2025年、プロ写真家コミュニティが主催する国際賞「35AWARDS」第10回で、「写真プロジェクト」部門の最優秀賞に輝いた。世界中から寄せられた応募作品47万点以上から選ばれた作品だ。
チャヴァリは同シリーズのために、まずはビルや建造物のそばを飛行する鳥を連写。それから、写した写真のコマをいくつも重ねて、1枚の画像に仕上げるという手法を取っている。そうすると、鳥が空間を通過した際の飛行ルートが記録される。AI(人工知能)は使わず、どの画像もチャヴァリ自身が撮った写真から合成されたものだ。
シリーズ作品で何よりも目を引くのは、鳥の飛行ルートが計算されたもののように見えることだ。高層ビルのすぐ横をそろって飛びながら、一つの隊形を保っている鳥の群れ。長く滑らかな弧を描いて町の広場を横切っていく1羽のカモメ。チャヴァリが心を引かれるのは、そうした目には見えないまとまりのようなものだった。
チャヴァリは、「混沌としたなかに秩序が存在しているように思えるところに魅力を感じている」と話す。「鳥の群れは、伸びたり、折り重なったり、離れ離れになったりした直後、ほんの数秒で、また一つにまとまったりする。1羽が方向転換すると、どういうわけか、その決断が群れ全体に伝わっていく」
この気づきは、動物の行動に関する最も興味深い疑問の一つに結びついている。それは、「リーダーが存在しない鳥の群れが、都市のような複雑な空間で一体化して移動できるのはなぜか」という問いだ。チャヴァリの写真からは、この問いへの答えが意外なほどはっきりと浮かび上がってくる。



