機微情報なしでも、自分向けの回答を得られる
AIの回答が利用者の好みに合い、利用者自身が記憶されている内容を把握し、流出して困る情報を入力していなければ、利便性とプライバシーをおおむね両立できていると考えられる。
仕事の情報と私生活の情報を分け、機微な話題には一時チャットを利用し、モデル学習に使わせるかどうかを自分で選んでいることも判断材料になる。ただし、回答が個人向けになっていても、正確性が高いとは限らない。AIが示した内容は別途確認する必要がある(AIの事実確認の解説も参照)。
AI事業者に対して、スタンフォード大学の研究者はモデル学習への事前同意を求め、個人情報をチャットから初期設定で除去するよう勧めている。シスコの調査でも、消費者の78%がAIの倫理的利用を企業などの組織の責任だと考えていた。
AIが利用者に合った回答を返せるのは、好みや過去のやり取りについての情報を持っているからだ。ただし、役立つ情報は漏えい時の危険にもなる。提供内容を絞り、必要に応じて一時チャットや学習拒否を選び、メモリーとアプリのアクセス権限を定期的に見直すことが重要だ。
社員名や口座番号を明かさず、状況だけを伝える
AIに機微情報を渡さなくても、回答を個人向けに調整できる。役に立つ背景情報の多くは、仕事上の役割、好みの文体や書式、普段使うツール、関心分野など、比較的リスクの低い内容だ。OpenAIのメモリーに関する案内では、健康情報などの機微情報が記憶される場合もあるため、記憶内容を確認できる。Claudeの記憶設定の説明では、健康、宗教、政治などの話題は、利用者が設定をオンにしない限り保存されない。
詳しい個人情報を伝えずに済ませるには、状況を一般的な言葉で説明すればよい。社員の名前を挙げる代わりに「小規模チームを管理している」と伝える。銀行口座番号を入力せずに「4人家族の予算を立てている」と説明する方法もある。
文体や書式など、長期間変わらない好みは、OpenAIが明示的な希望を設定する場所として案内するカスタム指示や設定欄に入力する。具体的な事情を伝える必要がある場合は、一時チャットやシークレットチャットを選ぶ。Claudeは案件ごとに別のメモリーを管理できるため、異なる案件の情報が混ざるのを避けられる。
AIの記憶機能とモデル学習は何が違う?
AIのメモリーは、利用者についての情報を保存し、後の会話で呼び出す機能だ。毎回、好みや事情を最初から説明し直す手間を減らせる。モデル学習は、すべての利用者に提供するAIの基盤モデルを構築・改善する工程である。メモリーは個々の利用者に合わせるための機能で、モデル学習は基盤となるAIの性能を改善するためのものだ。
ただし、記憶された情報がモデル学習にも使われる場合がある。OpenAIによると、利用者が学習利用を拒否しない限り、メモリーを含む提供データをモデル改善に利用することがある。そのため、メモリーの利用設定とモデル学習への提供設定は、別々に確認する必要がある。
会話を削除しても、記憶した情報は残ることがある
削除の仕組みも異なる。OpenAIは、チャットを削除しても、利用者について記憶した内容が自動的にすべて消えるわけではないと説明する。記憶した情報を消す場合、メモリーの概要と関連する情報源を確認し、必要な削除操作を行う。
Claudeのヘルプセンターも、削除したチャットから生成された記憶情報は残る場合があるとしている。Claudeでは記憶内容を確認し、管理機能を通じて削除できる。


