メタ(Meta)は、利用者に代わって作業を進めるパーソナルAIエージェント「Muse」について、日本での提供を2026年10月23日に開始した。iOS、Android向けアプリとウェブ版で利用できる。
MuseやChatGPTなど、利用者の情報を記憶する機能を持つAIサービスは、過去のやり取りから好みや事情を覚え、回答をその人に合わせて変えられる。例えば、短いメールを好むことや菜食主義者であること、家族がどんな贈り物を喜ぶか、誰の誕生日が近いかまで覚えておける。
利用者に合わせてAIの回答や提案を調整する仕組みを「パーソナライズ(個人化)」と呼ぶ。便利な回答を得られるのは、AIが利用者に関する情報を保持しているからだ。利便性と個人情報の保護をどう両立するかが問題になる。
シスコの2024年消費者プライバシー調査結果では、消費者の63%がAIは生活の改善に役立つと考え、78%が企業などの組織にはAIを倫理的に使う責任があると答えた。しかし、ピュー・リサーチ・センターの調査結果によると、米国の成人の半数は、日常生活にAIが広がることに期待より不安を感じている。期待のほうが大きい人は10%にとどまる。
AIはどのように利用者の好みを覚えるのか
AIは利用者の好みや過去のやり取り、関心、置かれた状況を参考にして、回答や提案、実行する処理を調整する。会話や利用履歴から好みを記憶・推測し、次の依頼を受けた際に参考情報として使う。
好みの把握には2つの方法がある。利用者が「会議メモはこの書式でまとめてほしい」と明示的に伝える方法と、AIがやり取りから好みの傾向を推測する方法だ。OpenAIのメモリー機能についての説明では、ChatGPTは保存済みのメモリーや過去のチャット履歴を回答の調整に利用する。買い物のおすすめ、担当案件を覚えている業務用アシスタント、旅行の好みを学ぶアプリ、行動に合わせた広告・販促メッセージなどに応用される。
過去のやり取りを回答に反映することと、AIモデルそのものを改善する「学習」は別の仕組みだ。モデル学習では、個々の利用者への回答を調整するのではなく、全利用者が使う基盤モデルを改善するためにデータを利用する。
接続アプリを増やすと、参照できる情報も広がる
少ない情報でも回答を個人向けに調整できるが、内容は一般的になりやすい。AIは把握している範囲でしか回答を調整できないため、利用者の習慣や履歴を多く知るほど役に立つ。利便性と提供するデータ量の間には、避けられないトレードオフがある。
AIが参照する情報は製品によって違う。アンソロピックによると、Claudeのメモリーには利用者の仕事上の役割、案件、職場や私生活で関わる人、好みの連絡方法などが含まれる。グーグルの説明では、Geminiも過去のチャットを使って利用者の好みに合わせた回答を作る。
開発企業のプライバシーポリシーを調べたスタンフォード大学の研究者は、複数のサービス間でデータ統合が行われていると指摘した。グーグル、メタ、マイクロソフト、アマゾンは、チャットのやり取りに検索語句、購入履歴、SNS上の活動を日常的に組み合わせているという。AIアシスタントにカレンダーやメール、クラウドストレージを接続すると、保存されている内容も読み取れるようになる。端末で許可した権限によっては、位置情報も利用対象になる。



