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欧州

2026.10.25 11:00

「年最低4日の指導で約4億円」マンチェスター・シティ、マンチーニ元監督に偽装報酬疑惑

zigres - stock.adobe.com

「フットボール・リークス」がマンチェスター・シティへの調査を招いた

国際税務の動向を追ってきた読者なら、2010年代半ばに機密の税務・金融情報が流出し、国際的な騒動となった「パナマ文書」と「ルクセンブルク・リークス」を思い出すだろう。サッカー界の「フットボール・リークス」も、騒動の規模こそ小さいが同種の情報流出事件であり、シティの問題の発端となった。

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フットボール・リークスの中心人物は、ルイ・ピントとして知られるポルトガル人ハッカー、ルイ・ペドロ・ゴンサウヴェス・ピントだ。2015年にハンガリーの首都ブダペストで暮らしていたピントは、欧州の有力サッカークラブの疑わしい金融取引に関する文書を匿名で投稿できるウェブサイトを開設した。ピントは数百万件もの文書を集めたが、多くはクラブやオーナー、監督、選手、代理人にとって秘密にしたい情報だった。

集まった文書の大半は、選手契約の珍しい条項など、当事者が恥ずかしい思いをする以上の意味を持たないゴシップにすぎなかった。ところが、シティがプレミアリーグの財務規則を軽視していたことをうかがわせる、クラブ内部のメールとされる文書も含まれていた。ピントは文書をドイツの報道機関シュピーゲルの調査報道チームに渡した。同誌はイタリア誌レスプレッソと協力し、2018年にシティの異例な金融取引を暴く4部構成の連載を掲載した。

連載をきっかけに、プレミアリーグ、UEFA、HMRCがシティを調査することになった。

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ただし、自らを内部告発者と称したピント自身も、投稿サイトに関連する複数の犯罪で起訴された。ハンガリー警察に逮捕され、ポルトガルへ身柄を引き渡された後、2023年に民間のITシステムへの不正アクセス、私的メールの公開、恐喝未遂で有罪となった。禁錮刑の執行を猶予する4年の判決を受け、収監は免れた。

スポンサー収入よりもマンチーニ監督への偽装報酬が税務上の焦点

独立懲戒委員会は、シティがADUGから受け取った直接の資金提供をスポンサー収入に見せかけ、営業収入を水増ししたと認定した。本来は出資者による資本拠出として扱うべき資金を、クラブの営業収入に計上したことになる。実際の営業損益は大幅な赤字だったため、8億3000万ポンド(約1751億3000万円)分の収入を過大計上し、同額だけ損失を小さく見せたという。

ただし、税務当局のHMRCが注視すべきなのは、必ずしもスポンサー収入の水増しではない。資本拠出を営業収入に付け替えて純利益を多く、または純損失を少なく見せても、税務調査上のリスクはさほど大きくない。むしろ本来より多く税金を支払う可能性さえある。

税務上の焦点は、2009年から2013年までの4シーズン、シティを率いたカリスマ性のあるイタリア人監督ロベルト・マンチーニへの報酬の一部を、クラブが隠そうとしたとする委員会の別の認定だ。

マンチーニの年4日の指導料がシティ監督の年俸を上回る

表向きマンチーニは、別のコンサルティング契約から多額の報酬を繰り返し受け取っているように見えた。契約先はUAE国内リーグに所属するアブダビのサッカーチーム、アルジャジーラ・スポーツ・アンド・カルチュラル・クラブだ。アルジャジーラのオーナーもマンスールだ。マンスールは米国のニューヨーク・シティFCなど、世界各地に複数のサッカークラブを所有している。

コンサルティング契約の資金はADUGが負担し、モーリシャスに設立されたマンチーニの個人会社、スパークルグロウ・ホールディングスへ直接支払っていた。契約では、アルジャジーラの選手を年間最低4日指導するだけで、マンチーニは税引き後175万ポンド(約3億6925万円)の年額報酬を得ることになっていた。ところが、シティの監督としての基本年俸は、税引き後145万ポンド(約3億595万円)だった。

英国の税務弁護士ダン・ナイドルも、こうした副業契約の高額報酬は異例だと指摘している。アルジャジーラを年間4日間指導した報酬が、シティを1シーズン指導した年俸を上回るというのは理に合わない。

偽装契約が事実なら、シティに約25億円の納付不足との推計

懲戒委員会によると、コンサルティング契約は、マンチーニがシティの監督を務めた報酬をクラブとADUGの両方から秘密裏に受け取るための偽装契約だった。2つの支払いを合計した報酬は、税引き後で年間320万ポンド(約6億7520万円)。ADUGが総額の半分以上を負担していたことになる。

別契約による報酬も通常の労働所得であり、その支払いにシティが法的責任を負うと認定されれば、クラブは英国の給与から源泉徴収する所得税(PAYE)と国民保険料を納める必要があった。HMRCはシティに税金の不足額をまだ通知していないが、ナイドルは過少納付額を約1200万ポンド(約25億3200万円)と推計する。

意図的な隠蔽が刑事上の脱税に当たるかどうかも別の問題として浮上する。懲戒委員会は、シティが虚偽の財務諸表を故意に提出したと認定した。仮にコンサルティング契約が手の込んだ偽装であったなら、不注意による間違いでは済まない。

UAEの投資を気にかけるバーナム首相の矛盾

2026年7月に就任した英国のアンディ・バーナム首相は、2017年から首相就任前までグレーター・マンチェスター市長を務めた。クラブの所有構造やマンスールの関与、UAEによる地域経済への大規模な投資について、バーナムは独自の実務知識と理解を持っているはずだ。

シティの問題が目立たない形で立ち消えになれば、UAEが英国経済へ数十億ポンド(数千億円)もの追加投資を行う意欲を損なわずに済む。バーナムは、そんな展開を望んでいるのだろうか。

2026年9月、シティの不正疑惑について質問されたバーナムが最初に気にかけたのは、UAEがマンチェスター地域への投資を打ち切る可能性だった。バーナムは英BBCに「UAEの投資家を失うことを非常に懸念する」と述べ、シティの不服申し立てにクラブ側の立場で自ら介入するのは誤りだとも語った。

バーナムは、クラブが規則に違反したか、納税義務を果たしたかを気にかけるより先に、重要な外国投資家であるマンスールと戦略的同盟国UAEの立場を案じた。首相としての最初の反応が、投資家への共感だったことは明らかである。

教訓は明白だ。マンチェスター市長の立場で振る舞うことも、英国首相の立場で振る舞うこともできる。しかし、2つの立場を同時に担うことはできない。

(forbes.com 原文)

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