プレミアリーグが約9年にわたる不正な会計処理を認定
資金力に恵まれたシティだが、2026年はサポーターにとって厳しい年となった。5月にはアーセナルがプレミアリーグで優勝し、名将ジョゼップ・グアルディオラもシティの監督を退任した。
より深刻なのが財務上の不正問題だ。プレミアリーグは2026年9月29日、2009-10シーズンから2017-18シーズンまでの9シーズンを調べた独立懲戒委員会の報告書を公表した。委員会は、財務規則をめぐる刑事事件ではない115件の申し立てのうち、114件でシティの違反を認定した。争点は、クラブが偽装契約を使って収入を水増しし、費用を実際より少なく計上していたというものだ。
不正疑惑が持ち上がったのは初めてではない。欧州サッカー連盟(UEFA)は2020年、財務報告義務違反の疑いでシティに欧州の国際大会から2年間追放する処分を科した。しかし、スイス・ローザンヌにあるスポーツ仲裁裁判所(CAS)が後に処分を取り消した。(参照:ガブリエレ・マルコッティ「CAS Lifts Man City’s UEFA FFP Ban, but Questions Remain」、ESPN、2020年7月13日)
シティは違反を否定、2027年に判断が出る可能性
独立懲戒委員会の決定書は広範囲が黒塗りされ、高等法院の判決文のような体裁だ。シティは不正を否定し、2026年10月1日に包括的な不服申し立てを行った。クラブは委員会の判断について「法律、原則、事実の複数の点で明白かつ重大な誤りがあり、信頼できない」と主張している。
リーグの規則では、司法委員会が選ぶ3人の審査会が不服申し立てを審理する。審理は12週間以内に開かれ、そこから30日以内に判断が示される。司法手続きによって遅れる可能性もあるが、早ければ2027年2月に決着する見通しだ(クラブの公式発表、2026年10月2日)。
財務規則の回避は税金や社会保険料の過少納付にもつながり得る
シティにはリーグの制裁とは別に、税務問題が生じる可能性がある。財務規則を回避しようとしたとされる行為が、税金や英国の国民保険料(NIC)の過少納付にもつながっていたかもしれない。スコットランドのグラスゴー・レンジャーズFCを巡る過去の税務訴訟は、よく似た問題が実際に起きた例だ。
レンジャーズは選手報酬約99億円を国外信託に移して敗訴
レンジャーズは、選手に支払う報酬の一部である4700万ポンド(約99億1700万円)を国外の従業員給付信託へ移し、数百万ポンド(数億円)に上る国民保険料の負担を減らそうとした。
HMRCは信託を経由した支払いも課税対象となる報酬や給与だと判断し、訴訟となった。2017年、英国最高裁はHMRCを支持する全員一致の判決を下し、レンジャーズが敗訴した。
英税務当局は2018年からシティを調査していたとの報道
シティも、従業員給付信託を使わずに似た方法で国民保険料を回避しようとした可能性がある。HMRCは、懲戒委員会の調査対象となった行為を以前から把握していたようだ。英フィナンシャル・タイムズは2026年10月、HMRCが2018年からシティを調査していたと報じた。有名クラブが対象で、オーナーが有力者だとしても、国民保険料に関する案件を8年も抱えるのは長過ぎる。
HMRCの長官兼事務次官であるジョン・ポール・マークスは2026年10月12日、下院財務特別委員会委員長のメグ・ヒリアー議員に書簡を送った。シティの税務問題について照会を受けたマークスは、納税者情報の守秘義務を理由に、未納の税金があるかどうか明らかにしなかった。HMRCはプロサッカークラブと従業員の納税義務の順守を重視しており、2017年から業界全体の税務リスクを特定、調査、是正する専任チームを設けているという(英議会公開の書簡、2026年10月12日)。


