米銀行のバンク・オブ・アメリカは、米国時間2026年10月12~18日の週、セールスフォース(Salesforce)株の投資判断を異例の2段階引き上げた。企業向けの顧客管理ソフトウェアを提供するセールスフォースへの評価を、弱気の「アンダーパフォーム」から直接「買い」へ変更した。担当アナリストは数カ月前、株価が安値圏に沈む局面で弱気の判断を示していた。しかし、格上げが発表されるまでに、セールスフォース株は2026年6月の安値から50%超上昇していた。
ウォール街の投資判断は、なぜ株価の後追いになるのか
バンク・オブ・アメリカによる急な判断変更は、多数のアナリストが示す評価を重視するウォール街の市場分析に、根本的な欠陥があることを浮き彫りにする。
欠陥の背景には、経済学の教科書で「効率的市場仮説」と呼ばれる考え方がある。入手可能な情報はすべて株価に反映され、市場は完全に合理的に動くという理論だ。だが現実の金融市場は、冷静な数学的計算よりも人々の感情や短期的な市場心理に左右され、株価は大きく変動する。
ウォール街のアナリストは、企業の業績や経営状態の先行きを予測できるかのように振る舞う。しかし、実際に示す投資判断は、しばしば直近の株価の勢いを追いかけている。株価が急落すれば下落を説明する悲観的な見方に飛び付き、反発すれば上昇に乗り遅れまいと強気の判断へ切り替える。多くのアナリストが共有する評価を頼りに売買の時期を決めると、高値付近で買い、安値で売る結果になりかねない。
株価が急落しても、企業の事業基盤が弱くなったとは限らない
セールスフォースの事業そのものが、短期間で大きく変わったわけではない。バンク・オブ・アメリカの同じアナリストは約5カ月前、株価が約178ドル(約2万8100円)の時に「アンダーパフォーム」と判断していた。人工知能(AI)によって、セールスフォースが展開してきたソフトウェアの料金体系が揺らぐと警告したのだ。
ところが、セールスフォースのソフトウェアに組み込まれた主要な業務手順やデータベースは、株価が下落する間も堅固なままだった。企業顧客が他社製品へ乗り換えるには大きな負担がかかるという強みも、失われていなかった。ウォール街のアナリストが動揺したのは、単に株価が下落したからだ。



