感情労働(エモーショナル・レーバー)に関する研究では、仕事における感情の管理や表出に伴う労力が検証されてきた。それとよく似た現象がここでも起きている。皆が秘密を打ち明ける相手になると、単に情報を受け取るだけでは済まない。それを整理し、口外してよいことと悪いことを記憶し、相手の気持ちを落ち着かせてから、ようやく自分の仕事に戻るのだ。
誰もあなたに「もう一つの仕事」を与えようと意図したわけではない。だが、結果的にそれを引き受けてしまっていることに変わりはない。
「誰にとっても安全な人」でいることが、不都合な対話を阻む
広く好かれていることには、もう一つの副作用がある。いつしか、その評判を守ろうとし始めてしまう点だ。
「話のわかる人」「共感力がある人」「誰のことも理解してくれる人」と周囲から見られていると、そのイメージを損なうような行動をとることが難しくなる。仕事への率直な意見を求められたが、褒められる内容ではない場合。マネージャーから士気低下の原因を聞かれたが、本当の理由を話せばマネージャーを不快にさせてしまう場合。あるいは、2人の同僚がお互いに相手が悪いと思っており、どちらからも同意を求められているような場合だ。
ここにおいて、人気は制約と化す。相手に「理解された」と感じさせる術を知っているため、それをつい続けてしまう。議論の双方の立場が分かるため、一方を選ぶのをためらう。緊張を和らげることが上手になりすぎた結果、時には必要なはずの緊張関係まで解消してしまうのだ。
従業員の発言行動(エンプロイー・ボイス)に関する研究によれば、事業の助けになる発言であってもリスクを感じる理由が示されている。そのリスクとは、必ずしも公式な報復ではない。単に、発言後に周囲からの評価が変わってしまう可能性のことだ。互いに信頼し合っていないグループ間でバランスよく信頼されていることで影響力を得ている人にとって、このリスクは一層大きくなる。
役職が上がるにつれて、この問題は深刻化する。リーダーシップとは、最終的に誰かを失望させることを伴うものだ。誰かがポジションを得られず、提案が却下され、伸び悩む社員には聞きたくない耳の痛い話をしなければならない。全員を満足させて立ち去らせるような外交的な言い回しが存在しないこともある。
したがって、「好かれること」を中心に自身のアイデンティティを築いてきた社員は、予期せぬ壁に突き当たることになる。互いに心地よい関係である限り人間関係を築くのは得意だが、真の試練は、心地よさを提供するのをやめたときにも敬意を維持できるかどうかだ。
思いやりがあることと、部屋にいる全員に好かれた状態でその場を去りたいと思うこととの間には違いがある。キャリアを重ねるにつれ、その違いは白日のもとに晒される。


