まだ文献こそ多くないものの、特に先を見据えた科学者や技術者のなかには、太陽系の姿を、少なくともその大部分について、新たに描き直そうとしている人たちがいる。
「Dyson swarm(ダイソン・スウォーム)」という言葉から家電メーカーの掃除機を想起した読者は、少々頭を切り替える必要があるかもしれない。簡単に言えば、大量の人工衛星を群れ(スウォーム)のように集めて、宇宙でエネルギーを得ようという構想だ。名前は、恒星を丸ごと取り囲んでそのエネルギーを集める巨大な構造物「ダイソン球」を1960年に提唱した、物理学者フリーマン・ダイソンにちなんでいる。だが、夢はそこで終わらない。構想のなかには、太陽系の惑星や衛星を、いわば「不動産」に見立てて使い道を考えるものもある。そうした構想が行き着く先では、天体の顔ぶれは、いまとは少しばかり違って見える。
順を追って説明しよう。
物理学者でコンピューター科学者のアレックス・ウィスナー=グロスとともにホストを務めるポッドキャスト番組に、宇宙データセンター開発の新興企業「Starcloud」の共同創業者兼CEO、フィリップ・ジョンストンを迎えた。Starcloudは宇宙データセンターを開発する新興企業で、すでに目を見張るような設計をいくつも形にしてきた。ジョンストンはその共同創業者かつCEOである。
ジョンストンと同社は、3つのことで知られている。軌道上で動くデータセンターを開発していること、エヌビディアの半導体を人工衛星に載せたこと、そして宇宙で初めてAIモデルを学習させたことである。ジョンストンは、こうしたシステムで何ができるかについて、かなり先を行く考えを持っていた。もっとも、いくつかの点でさらに大胆に踏み込んだのは、アレックスのほうだった。
番組の冒頭近くで、ジョンストンは、いまの事業の進め方と、投資家からの資金が潤沢になった同社がいま何を目指しているのかを、少し説明した。ジョンストンによれば、Starcloudは米連邦通信委員会(FCC)に、8万8000基の衛星で合わせて約20ギガワットの電力を生み出す計画を申請しているという。
宇宙を遊び場に
FCCへの申請の話の後、話題はすぐに、共同司会者のアレックスが来たる時代に向けて思い描く、壮大な構想へと移った。最初に出てきたのは、ダイソン・スウォームが太陽同期軌道に光の輪をつくり、それが明け方や夕暮れに地上からも見える、というアイデアである。アレックスは、空にメッセージを描くこともできるのではないか、とも言った。
「それは(FCCへの)申請書には書いていませんね」と、ジョンストンは苦笑まじりに言った。少なくとも、私にはそう聞こえた。



