8500人のオペレーターの行方
Billieが対応しきれなかった入電は、質の異なるものだった。顧客は開店時間だけでなく、「自分のリビングには何色のソファが合うか」といった、マニュアルでは提供できない個人のセンスや判断を要する購買決定に関する質問を投げかけていたのだ。
そこでインカは、オペレーターがより複雑な問い合わせに対応したり、インテリアデザインの販売アドバイザーとして働けるよう再教育を行った。同社によると、このプログラムにはリモートでのインテリアデザイン提案、デジタルリテール販売、顧客との信頼関係構築、複雑な課題解決などが含まれていた。
「生涯学習、育成、再教育を通じてインカで働く従業員の雇用可能性を高め、新たな雇用の創出を加速させることに取り組んでいる」と、インカのグローバル・ピープル&カルチャー・マネージャーであるウルリカ・ビーゼルトは、2023年6月に公開されたロイターのインタビューで述べている。
同じインタビューで、AIの導入拡大が従業員の削減につながるかと問われると、彼女は「現在、そのような状況にはない」と答えた。
通話記録を2つに分類してみれば、そのロジックは単純だ。ボットが容易に回答できる質問が売上につながることは稀だが、ボットが回答できない質問は売上につながることが多いのだ。
創出された新たな販売チャネル
リモート販売センターは現在、インカがイケア店舗を展開するすべての国をカバーしている。2025年度の売上高は13億7000万ドル(約2160億円)に達し、前年度の11億7000万ドル(約1850億円)から増加した。
これは一過性の急増ではない。同チャネルは3年連続で前年比15〜20%増を記録しており、イケアの全販売チャネルの中で最も速いペースで伸びている。インカの最高デジタル責任者(CDO)であるパラグ・パレクは、Fortuneに対してこの成長曲線をホッケースティック型の急成長と表現した。
売上を生み出したのはボットではない。ボットはオペレーターの業務時間を定型業務から解放したに過ぎない。そして人間が、顧客が喜んで対価を支払うような仕事でその時間を満たしたのだ。
数字が示さない真実
インカのビジネス全体と比較すると、このチャネルはまだ規模が小さい。同社の2025年度の売上高は約478億ドル(約7兆5500億円)であり、リモート販売は全体の約3%にとどまる。2023年、同社はロイターに対し、2028年までにその比率を10%に引き上げたいと語っていた。


