創造性を強調する
堅固な基盤があれば、従業員に心理的安全性を感じてもらい、新しいことを試すよう促すのに役立つ。こうした基盤ができて初めて、企業は、イノベーションの他の側面に照準を合わせることができる。具体的には、創造的思考を促進し、既存の企業文化にフォーカスすることで自然に生じる、既存の境界を乗り越えようとする気運が盛り上がるはずだ。
すべての企業が、日常的に創造性にあふれるプロのクリエイターと業務で関わっているわけではないが、創造性やコラボレーションに力点を置くことは、あらゆる仕事の環境で応用可能な手法だ。創造的思考とは、実際には、問題解決の一つの手法にほかならない──とりわけ、これまで試されてこなかった角度から課題にアプローチしようとする際には。
全米商工会議所が指摘しているように、比較的シンプルな思考実験でも、創造性を刺激し、チームがインスピレーションを得るきっかけになる。ブレーンストーミングや瞑想、ストーリーボードの作成、さらには、いつもと違う場所に出かける、といったことだけでも、ストレスが軽減され、新たなアイデアに触れる機会が得られる。創造的な問題解決は、個々の従業員のルーティンを変え、それによって各人の生産性を向上させる効果も期待できる。
企業の基盤となる文化が、創造性を重んじる風潮と融合すれば、社員も、単独あるいは共同プロジェクトで、斬新な解決策を作り出そうとする環境の発展につながる。理想を言えば、「創造的」と聞いてすぐに思い浮かぶようなマーケティングなどの部署だけでなく、企業のあらゆる部分で、創造性が不可欠なものになることが望ましい。
自由と集中のバランス
イノベーションに関する最大の障壁の一つは、事業の効率性と、創造的な実験とのあいだに生じる摩擦だ。地位を確立した企業は、信頼に足る結果を出すよう設計されている。そのため、予測可能なプロセスや、明確な説明責任、リスク管理や一貫性のある事業遂行といった要素を、事業の拠り所にしている。
一方でイノベーションには、不確実性や実験、そして時には、過去に成功をもたらしていた仕組みに対しても疑問をぶつける姿勢が必要になる。
このジレンマへの答えは、事業遂行における規律を放棄する、といったものではない。むしろ、仕事が持つさまざまな側面を受け入れられる余裕を作ることが大切だ。リーダーは、自由に新しいことが試せる場所を確保するための予算を確保し、配下のチームには意思決定の権限を与えることもできる。それと同時に、「責任ある姿勢で行う実験」と、「避けることが可能な業務上の失敗」を区別して捉えるべきだ。
さらにリーダーには、すべての実験が成功する必要はない、という認識も必要になる。初期段階にあるイノベーションは、そこから学んだことの質で評価される部分があってもいいはずだ。一方で、成熟したプロジェクトの場合は、顧客からの採用例や財務指標、測定可能な事業への影響に、評価の軸足を移すべきだ。
個別の社員レベルにおいては、好奇心を発揮する、フィードバックを求める、自らが抱える思い込みを疑う、すべての答えがわからなくても不安を抱かない、といった要素が必要になるだろう。
チームレベルでは、明確なゴールを設定し、当事者意識を共有し、ミスについては建設的に議論し、すべての人の声に貢献できる機会を与えることが課題になる。
さらに企業レベルでは、リーダーへのインセンティブや業績評価、リソースの配分、昇進の判断について、推進していきたいイノベーション行動と方向性を合わせる必要がある。


