姉妹番組の『タッチング・ユア・スタッフ』では、ヘルビッグが家の中を歩き回り、私物を勝手に物色していく。「このメディアなら、2000万ドルを支払わなくても、アメリカン・アイドルのような脚光を浴びる瞬間を手に入れられます」とレザ・イザドは語る。彼の会社コレクティブ・デジタル・スタジオは、「アイ・ラブ・メイクアップ」をはじめ、包丁で切り刻まれるまで他の果物をからかい続ける喋る柑橘類の番組『アノーイング・オレンジ』など、200以上のチャンネルを制作している。
どれも極めて突飛な内容だが、『グレースズ・フェイシズ』には素人っぽさは微塵もない。過度な商業色さえ感じさせない。同社の化粧品が使われているにもかかわらず、番組内のどこにもボビイ・ブラウンの社名は登場しない。それでも同社は、公開初週に30万回再生され、続く2週間でチャンネル登録者数を7万人獲得した実績に満足していると語る。
「コメディタッチの番組構成は私たちのブランドイメージに合致しており、より若い層の共感を呼ぶと考えました」とボビイ・ブラウン社長のモーリーン・ケースは述べる。マーケティング担当者たちはYouTubeに対して番組配信料を支払っているわけではないが、視聴者を呼び込むための大量の広告出稿に費用を支払っているのだ。
グーグルが最終的にこの競争に勝利する理由は至って単純である。ユニバーサル・マッキャンの最高投資責任者(CIO)デイビッド・コーエンによると、同社が実施した数々の調査において、動画広告はテレビCMよりも優れた成果を上げているという。「しかし、テレビ広告は摩擦のない完成されたシステムであり、非常によく整備された機械なのです」と彼は付け加える。
グーグルはラリー・ペイジの壮大なムーンショットで自由に遊ぶことができる。その挑戦のどれか1つは、やがて着陸に成功するかもしれない。しかし、そうした途方もない空想の費用を一体誰が支払うのだろうか。それはデジタルディスプレイ広告をテレビと同じくらい摩擦のない仕組みに仕上げることであり、それこそがグーグルの最も得意とする仕事である。勝利は時間の問題に過ぎない。


