Cloudflareは開発ツールから実行基盤まで買収を広げる
Cloudflareは2026年6月、ウェブアプリのソースコードを公開用にまとめるビルドツール「Vite」の開発元VoidZeroを買収した。10月のDeno買収は、同年に入って2社目のJavaScript関連ツール企業の買収となる。Cloudflareによれば、Viteの週間ダウンロード数は1億3000万回を超える。同社は買収後も開発ツール群をMITライセンスのオープンソースとして維持し、保守担当の開発者向けに独立した基金を設けると約束した。
2件の買収により、Cloudflareは、ウェブアプリのプログラムを配布できる形にまとめるビルド工程、プログラムの実行環境、自社サーバーへの配置まで関与を広げる。JavaScriptの開発基盤を買収によって集約する動きは、Cloudflareだけではない。アンソロピック(Anthropic)も2025年12月、AIを利用したプログラミング支援ツール「Claude Code」を支えるため、JavaScriptの実行環境「Bun」を買収した。
サーバーレス分野では、アマゾンの「AWS Lambda」、Vercel、Netlifyなどが、幅広い開発者に使われるサービスを展開している。ダールも、VercelとNetlifyを、Denoのクラウド実行サービス「Deno Deploy」にとっての競合として、Workersと並べて挙げたことがある。ヴァルダが強調するCloudflareの特徴は、公開されたworkerdが、同社の本番環境で実際に使われているソフトウェアと同じコードである点だ。celldの統合によって、自社サーバーでの運用に欠けていた処理とデータ管理の分散機能も補える。
AIエージェントの長時間処理を自社設備で動かすことも狙う
ダールがcelldの用途として重視しているのはAIエージェントだ。AIエージェントが長時間にわたって作業を進めるには、途中の処理状態を保存し、必要な通信を維持する仕組みが求められる。Durable Objectsは、低コストのサーバーレス実行、処理状態の永続保存、通信相手との接続を保ち双方向にやり取りする「WebSockets」を組み合わせる。AIエージェントの実行と進行状況を管理する基盤に必要な機能がそろうため、ダールは自社のインフラ上でAIエージェントを構築する企業を最初の顧客として狙っている。
Deno Deployは2027年4月ごろ終了、ランタイムの開発も同年10月ごろ停止へ
買収によって直ちに移行負担が生じるのは、Denoを利用する開発者と企業だ。CloudflareはDenoランタイムの不具合修正とセキュリティ更新を、2026年10月の発表から1年間、毎月提供する。2027年10月ごろにはCloudflareによるDenoランタイムの開発を終了する予定だ。ソフトウェアはMITライセンスのオープンソースとして残るが、その後の開発を引き継ぐと表明した組織はまだない。
Denoのクラウド実行サービス「Deno Deploy」は、2026年10月の発表から6カ月後にあたる2027年4月ごろに終了する。有料契約の利用者には、Cloudflare Workersへの移行支援が提供される。
ダールは開発者向け掲示板Hacker Newsのコメントで、Denoの開発を続けない判断の背景を説明した。Node.jsと同じように動かすための互換性対応に追われ、新しいプログラミングの仕組みを考える余地がほとんどなくなっていたという。創業者による率直な告白だ。ベンチャー投資を受けたオープンソース製品を利用する企業にとって、買収によって開発計画がいかに急速に変わり得るかを示している。


