企業のパーパス(存在意義)を追求することは容易ではない。しかし、政治的な雑音や変化する逆風の根底には、一つの根本的な真実が存在する。それは、パーパス主導のリーダーシップが、企業の業績、従業員のエンゲージメント、そして人材の定着に直接的な影響を与えるということだ。
筆者は先日、ソーシャルインパクトを専門とする弁護士であり、教育者、そしてビヨンド・アドバイザーズ(Beyond Advisors)の創設者兼CEOであるスコット・M・カランと対談した。カランはかつてクリントン財団の最高法務責任者(ジェネラル・カウンセル)を務め、複雑なグローバルな慈善活動を統括していた人物だ。著書『Better Good』のなかでカランは、リーダーが単なる善意を超えて、持続可能な組織的インパクトを構築する方法を提示している。
私たちの対談では、活力ある職場カルチャーを築くために、すべての経営幹部、人事リーダー、マネージャーが理解しておくべき3つの核心的なテーマが浮き彫りになった。
1. 職場のカルチャーと人間のつながりを裏付ける神経科学
職場のカルチャーを議論する際、リーダーはパーパスを「ソフトな(定性的な)指標」として扱いがちだ。しかし実際には、現代の神経科学が、人間は本質的に意味やつながりを求めるようにできていることを証明している。カランは、人が善行を行ったり、それを目撃したりすると、脳内でドパミン、セロトニン、オキシトシン、エンドルフィンといった化学反応が自然に引き起こされると強調する。
組織が共有されたパーパスや社会的責任を中心としたカルチャーを築くとき、それは人間の生物学的特性と直接合致する。従業員は、オフィスに足を踏み入れる際に、自らの根本的な性質を入口に置いてくるわけではないのだ。
「そのデータは、政党や議論の論点、ヘッドライン、あるいは逆風に左右されるものではありません」とカランは指摘する。「そのデータは、数十年にわたり、数十カ国で一貫しています。人々が関心を寄せていることに働きかけ、心地よいと感じてもらうことで、従業員の幸福度は高まり、より熱心に働き、より長く留まるようになります。そして、そのすべてが最終的な業績(ボトムライン)に極めて好ましい影響を与えるのです」
従業員が明確なミッションとのつながりを感じられる環境を作ることは、高い心理的安全性と信頼関係を育む。この一致によってバーンアウト(燃え尽き症候群)が減少し、チームのパフォーマンスが向上し、回復力(レジリエンス)のある職場カルチャーが構築される。
2. 企業のパーパスとアライシップが人材定着を直接促す
優秀な人材の獲得競争が激化する現代において、受動的な人材定着戦略ではもはや不十分だ。従業員は、経営陣がパーパスやアライシップへの真摯なコミットメントを示している職場を求めている。
リーダーが有意義な大義を積極的に支持し、企業の資源を社会のニーズに合致させ、インクルーシブな職場の規範を確立するとき、人材の定着率は自然と向上する。カランは、パーパスと深く結びついている企業は、その価値観を共有する人々を惹きつけ、引き留めることができるため、総合的な成長において競合他社を凌駕すると指摘する。
さらに、従業員の慈善寄付へのマッチングギフト制度や、地域社会の取り組みへの支援といった日常的な企業の善意(グッドウィル)は、従業員同士をつなぐ強力なツールとなる。
「誰もが『良き企業市民』を好むものです」とカランは説明する。「企業市民が地域社会や世界でどのように存在感を示すかを深く気にかけている点を含め、私たちには共通するものが数多くあります」
アライシップとは、単に大まかな声明を発表することではない。意図ある行動のことである。企業リーダーが従業員に対し、自身の価値観を仕事に反映させる手段を提供するとき、従業員は尊重され、理解されていると感じ、長期にわたって組織に留まる意欲を抱くようになる。
3. シンプルで意図的なフレームワークが組織のインパクトを拡大する
多国籍企業を率いていようと、地元のチームを率いていようと、複雑さはしばしば進歩を停滞させる。カランは、組織内で「善」を拡大していくには、シンプルさと絶え間ない集中が必要であると強調する。
非営利活動やソーシャルインパクトの分野において、カランは、理事会(Board)、運営(Operations)、プログラム(Programs)、パートナーシップ(Partnerships)からなる4つの組織構造(BOPP)を提唱している。営利企業にとっても、パーパスを具現化することは、これと同様の構造化された意図的なパターンに従う。
「意識的であること、そして意図的(インテンショナル)であること。人々が持ち帰るべきものは、この2つだけです」とカランは語る。「私たちは、自分たちが認めている以上、あるいは考えている以上に、多くの善行を行っています。私たちはそれをもっとうまく行う能力があり、より意図的に取り組めば取り組むほど、成果を高めることができるのです」
パーパスを職場のカルチャーに組み込むために、リーダーが企業の組織構造全体を一夜にして刷新する必要はない。組織がすでにうまく行っていることを棚卸しし、その上に意図的に積み重ねていくことで、リーダーは従業員の士気と業務パフォーマンスを変革することができるのだ。
リーダーが実践すべき一つの行動
エンゲージメントを即座に高め、職場のカルチャーの健全性を測りたいのであれば、今週からチームとの対話を始めてみよう。
次回の全体会議やチームミーティング、あるいは1対1の面談(1on1)の場で、シンプルな質問を投げかけてみてほしい。「世界をより良い場所にするために、当組織が独自に行っていることは何だろうか?」
返ってくる言葉に真摯に耳を傾けよう。そこから得られる気づきは、チームの核心的な動機を明らかにし、社内における潜在的なアライシップの機会を浮き彫りにする。そして、優秀な人材を今後何年にもわたって引き留め、惹きつけ続けるための、パーパス主導の戦略を構築するために必要な基礎データをもたらしてくれるはずだ。



