日本ワインはガラパゴスでいいのか。甲州が拓くグローバル戦略
国税庁の最新調査(令和7年アンケート)によると、日本のワイナリーによる日本ワインの国内売上量(約1万4,239kℓ)に対し、海外への輸出量はわずか203kℓ。実に98.6%が国内で消費されており、海外輸出はわずか1.4%にとどまるのが実情だ。熱心なファンによって高価格帯でも完売するならば、日本ワインはあえて海を渡らず国内で完結するビジネスでも成立するように見える。しかし中長期的な国内市場の縮小を見据えたとき、世界市場で正当な評価を獲得する構造を作っておくことは、産業の持続可能性において避けて通れないのではないか。
では、世界に向けて何をどうアピールすべきか。国際的なマーケティングにおいては、「日本を代表する品種(甲州などの固有品種)で一点突破を図るべきか」、あるいは「山梨のみならず長野や北海道など、産地ごとの多様な個性を最初からアピールすべきか」という戦略のジレンマが常に議論の的となる。

この問いに対し、ヘミングMWが示した戦略は理にかなっている。彼は「日本という国そのものが世界で独自の文化的価値を持っている」と指摘し、和食や日本酒、さらにはポケモンや任天堂など、世界の日常に浸透するブランド力が、文化への架け橋として機能しているという。
さらに「グローバルに存在する日本食レストランが、世界中の人々に日本ワインを紹介する最も容易で強力な入口になる」と説く。この世界的ネットワークに、和食との親和性が高く海外でも固有品種としての認知を得つつある「甲州」を掛け合わせ、名刺代わりに国際市場の扉を開くのである。
だが、その先の最大の関門となるのが、この「親しみやすさ」を実際の流通にのせるビジネスレベルでのパートナーシップ構築だ。サントリーのような大手流通網を持つ企業が道を切り拓く一方で、点在する小規模生産者が個別に海外営業を行うのには限界がある。複数の生産者がアライアンスを組み、サプライチェーンを統合することで、海外の消費者が試してみたいと思える適正価格帯で現地にワインを届ける仕組みづくりが急務となる。
世界のプロフェッショナルたちは、日本ワインに確かなポテンシャルを見出している。この小さな産業の熱量とスケールをどう束ね、独自のアイデンティティを世界へ届けていくのか。日本のワイン産業は今、国内消費の枠を越え、世界の市場で選ばれるブランドとしてどう自立していくのか、その次の一手を問われている。
『15か国・地域を飲んで旅する ワインの世界地図』(水上彩著、ダイヤモンド社刊)



