「ゲームのルール変更」が成長につながる
エヌビディアを例に挙げよう。同社が半導体業界の雄であることは明らかだが、その成長戦略は、チップ販売をはるかに超えた領域へとますます広がっている。エヌビディアは、高速コンピューティング、ネットワーク、ソフトウェア、開発者向けツール、クラウドインフラ、そしてパートナーシップにまたがるフルスタックのエコシステムを構築してきた。
エヌビディアは2026年、拡大を続けるAIクラウドエコシステムについて全貌を明らかにした。これは企業、スタートアップ、各国政府、開発者が、より高度化するAIアプリケーションを導入できるよう支援するために設計されたものだ。また、資本集約的なコンピューティングインフラへのアクセスを拡大するため、AIクラウドパートナーと、新たな資金調達モデルや収益分配モデルの実証実験も行なっている。
ここでの重要な教訓は、単に「AIに投資する」ということではない。自社のコア能力を中心にした経済システムを拡大することだ。製品を販売する企業は、取引を巡って競争する。一方、エコシステムを構築する企業は、多くの取引に関与できる。この違いは決定的な意味を持つものとなる。
革新的な企業は、単なる市場シェアだけでなく隣接分野にも目を向ける
Canvaは、もう一つの道筋を示している。同社は当初、専門的なデザイン知識を持たない人でもグラフィックデザインを利用できるようにすることから始めた。しかしCanvaは、単なるデザインツール企業にとどまることなく、コラボレーション、企業のワークフロー、AI、そしてプロ向けのクリエイティブツールへと、徐々に事業領域を拡大してきた。
Canvaは2025年、月間ユーザー数2億6000万人、売上高35億ドル(約5550億円)を報告した。同社は「Creative Operating System」を導入し、「Canva Enterprise」を拡充するとともに、「Canva Business」を立ち上げ、プロ向け製品「Affinity」を、Canvaのエコシステム全体に統合した。さらにCanvaは、同社のプラットフォームが、Fortune 500企業の95%で利用されていることも報告した。
ここから得られる教訓は示唆に富むものだ。Canvaは、必ずしも本来属する市場を放棄し、新たな成長分野を探す必要があったわけではなかった。同社が必要としたのは、自社の本来の能力によって何が可能になるのかを再解釈することだった。これは、既存企業が取り得る、最も強力なイノベーション戦略の一つと言える。
中核となる能力は、足掛かりになり得る。デザインはコラボレーションになり得る。コラボレーションはワークフローとなり得る。ワークフローは企業インフラとなり得る。そして、企業インフラはプラットフォームとなり得るのだ。
成長のための最も重要なツールは、より良い「問い」かもしれない
ここで価値を発揮するのが、Jobs to Be Done(JTBD:ジョブ理論)、カスタマージャーニー・マッピング、ビジネスモデル・キャンバス、シナリオプランニング、アサンプション・マッピングといったツールだ。しかし企業は、こうしたツールを誤用しがちだ。根本的な前提に疑問を投げかけるのではなく、既存のビジネスを最適化するために、これらを利用してしまうのだ。
より生産的で革新的なフレームワークがある。それは、現在の成長モデルに組み込まれている前提条件を特定することだ。前提条件とは、例えば以下のようなものだ:


