「検索で見つからない」情報
藤原が今回、第三者の声を前面に出す理由には、自身が渋谷の歴史を調べるなかで感じた切実な思いもある。
かつて代々木公園一帯にあった米軍家族の居住区、ワシントンハイツ。1950年代、そこにあったアメリカンな暮らしから溢れでた衣服やレコードは、渋谷の古着文化や音楽シーンの源流となった。60年代には、南平台の「アドセンター」や「アップルハウス」が雑誌やファッションのクリエイティブを牽引した──。

しかし、こうした文化の原点をひもとこうにも、古い写真や資料は十分に残っていない。渋谷の西武百貨店ができた1968年当時のことさえ、期待したほど記録が見つからなかった。そこで藤原は、当時を知る80代の先輩たちを訪ねて回った。
「過去の記録を探してもなかなか見つからず、当時を知る人の声を聞くことが重要だと思う事例が何度もありました。それにやっぱり、人の話を聞くのは面白いです」
人の記憶は曖昧だったり、意図せず書き換わったりもするため、同じ出来事をできるだけ複数人に聞く。記録にも記憶にも頼り切らず、その間を行き来しながら確かめることで解像度が上がっていったという。
FRAGMENT UNIVERSITYが対面講義にこだわり、オンライン配信やアーカイブ展開をしないのも、そこに理由がある。同じ空間で、話し手の声や表情だけでなく、戸惑い、会場の静寂や笑いなど、身体的な体験が大切だと考えるからだ。
そして、そこで聞いたことも100%信じるのでなく、興味や疑問を持ち、自ら確かめ始めるための場。それこそが、藤原が描く大学の姿だ。
その先に残る「人間の仕事」
対AIにしてもスタンスは変わらない。着想をすばやく可視化できるツールとして評価する一方、AIが提示するテキストや情報については、「簡単には信じられない」と距離をとる。速く案を出せることと、数ある案からどれかを選び取り、磨き上げ、誰かに届けることは、まったく別の仕事。AIが担える“作業”が増えるほど、その先の選択や塩梅に、人間のセンスが出る。
「違和感を含めてAIに負けちゃう時も、結構ありますけどね(笑)。AIが勝手に間違えて作り上げたものの違和感って、時にすごく面白かったりするから」

違和感はフラグメント ユニバーシティのキーワードのひとつかもしれない。第1期の卒業生としてオープンキャンパスに登壇したPOOL Inc.の小西利行は、ある講義で藤原が放った「ヒットや流行りって、要は違和感と奥行きなんだよね」という言葉を、今も自身の仕事の軸に置き、実際のプロジェクトに生かしているという。
もうひとり、ONE MEDIAの明石ガクトは、自社の経営が順調に進む一方で抱えていたミドルエイジ・クライシスを打ち破るきっかけを得て、藤原らとポッドキャスト番組「BAD PHARMACY」を立ち上げた。


