認知症と診断された時点で過体重または肥満だった人は、標準体重の人よりも死亡リスクが低いことがわかった。認知症の進行に伴う体重減少や栄養状態の変化について、さらなる疑問を投げかける結果となっている。
専門誌『Journal of Alzheimer’s Disease』に掲載された研究によると、認知症と診断された時点のBMI(体格指数)が30から34.9だった患者は、標準的なBMIの患者と比べて死亡リスクが27%低かった。また、BMIが25から29.9の患者は死亡リスクが16%低いことがわかった。
さらに、BMIが35以上となる重度の肥満の患者では、死亡リスクが22%低かった。
研究チームは、米国の研究『Health and Retirement Study』で1998年から2022年にかけて収集されたデータを使用した。調査開始時は認知症ではなかったものの、後に診断を受けた4523人を対象とし、他の持病や喫煙歴、年齢や性別などの要因を調整して分析を行っている。
研究チームは、体重減少による交絡(編集部注:要因と結果の両方に影響を与え、見かけ上の相関を生み出す統計的因子)や、認知症を発症した人のみを対象としたことで生じる統計上の誤差、生存者バイアスなど、複数の偏りの影響を検証した。しかし、これらの要因では今回の関連性を説明できないと結論づけている。
過体重や肥満の人の死亡リスクが低くなる正確な理由はまだ解明されていない。だが研究チームは、今回の結果が「診断時の体重は、予後を示す重要な指標になる」という見方を裏付けるものだと述べている。
脳の中枢機能が変化すると、患者は自力で食事をとることが難しくなる場合がある。そのため研究チームは、筋肉量やエネルギーの蓄えとして余分な体重があることが、結果的に認知症患者の死亡リスクを下げている可能性があると考えている。
一般的に肥満は健康悪化と結びついており、35歳から65歳までの肥満は認知症のリスクを約30%高めるとする先行研究もあるため、今回の結果は特に驚きをもって受け止められている。これまでの研究の多くは肥満がそもそも認知症の発症リスクを高めるかどうかに焦点を当てていたが、今回の新たな知見は診断時の体重がその後の生存率にどう影響するかに注目したものだ。
そもそも認知症に伴う体重減少は診断の10年前から始まることがある。2023年の研究では、診断の数年前から体重減少が加速し、その後も継続するものの、体重の減少自体は10年以上前から始まっていることがわかっている。
論文の筆頭著者であるバージニア・チャンは、「認知症の患者が意図的に体重を増やして肥満を目指すべきだという意味ではない。我々の研究はそのような問いを検証するためのものではない」と述べている。



