今回の取引で資産の売却は行われなかったため、パラマウントとワーナーがそれぞれ独立して所有していたすべての事業を新生スカイダンスが掌握する。これには、映画スタジオのNew Line Cinema、Miramax、DC Studios、ワーナーの映画レーベルであるClockworkなどが含まれる。また、Paramount+、HBO Max、Pluto TV、Discovery+といった動画配信サービスも傘下に入る。さらにスカイダンスは、CBSや、Animal Planet、BET、Cartoon Network、CMT、CNN、Comedy Central、Cooking Channel、Discovery、Food Network、HBO、HGTV、MTV、Nickelodeon、Showtime、Smithsonian Channel、TCM、TLC、TNT、TV Landなどの多数の主要ケーブルチャンネルも支配下に置く。
加えて、『ハリー・ポッター』『ゲーム・オブ・スローンズ』『ルーニー・テューンズ』『ロード・オブ・ザ・リング』『ミッション:インポッシブル』『スポンジ・ボブ』『スター・トレック』『トランスフォーマー』といった強力なフランチャイズやブランドもすべて統括することになる。
買収完了に先立ち、パラマウントは5日にスカイダンスの新たな経営陣を発表した。米玩具大手マテルのイノン・クレイズCEOが、エリソンとともに共同CEOに就任する。この新体制には、HBOトップのケイシー・ブロイスやCNN編集長のマーク・トンプソンなど、旧ワーナー・ブラザースの幹部も一部加わる。一方で、ワーナー・ブラザースの映画部門トップを務めたマイケル・デ・ルカやパメラ・アブディらは会社を去った。両氏は昨年、『Sinners』や『マインクラフト/ザ・ムービー』といったヒット作を世に送り出したが、スカイダンスの映画部門はパラマウント側の幹部が引き継ぐ。
ワーナーのデビッド・ザスラフCEOも5日付で退任し、買収成立に伴い5億5000万ドル(約870億円)の退職金を受け取ったと報じられている。両社はトップレベルで経営陣を統合したものの、少なくとも初期の段階では主要資産の一部は引き続き独立して運営される見通しだ。CNNとCBSニュースも別組織として存続し、ブロイスも「HBO MaxとParamount+をひとつの配信サービスに統合することはない」と述べている。
スカイダンスの実際の運営には課題も山積みだ。エリソンはメディア業界の覇者となる野心的な計画を長年掲げてきたが、新会社は約800億ドル(約12兆7000億円)の負債を抱えて船出することになる。資金調達の取り決めに基づき、スカイダンスは2029年までにこの負債を大幅に減らす必要がある。さもなければ、エリソンCEOの父で米オラクル創業者のラリー・エリソンが私財を投じて補填する責任を負う。またパラマウントは以前、合併により少なくとも60億ドル(約9500億円)のコスト削減を見込んでいると述べており、業界関係者はレイオフによってこれが実行されると予想している。
さらに各州との和解条件により、スカイダンスは今後5年間で少なくとも30本から32本の映画を製作し、その一定割合を米国内で撮影しなければならない。ただし、オリジナル脚本に基づく小規模スタジオ制作の「インディペンデント映画」や、巨額の予算を投じる「テントポール作品」は、そのうちの数本でよいとされている。また、トランプ支持者であるエリソンが報道に関与することへの懸念の声を受け、CNNとCBSニュースを監督する独立した編集委員会が設立される予定だが、新生スカイダンスのもとで両報道機関がどう運営されていくのかにも注目が集まる。


