ペストの疑いがある患者には、飛沫感染対策が講じられる。これには、患者を個室に隔離し、医療従事者が少なくとも医療用マスク、保護眼鏡、手袋を着用して治療を行うことが含まれる。抗生物質による治療を48時間継続し、症状の改善や呼吸器分泌物の減少が認められれば、飛沫感染対策を解除することができる。
今回の事例がパンデミックにつながる可能性は?
現時点では、今回の事例が肺ペストの感染拡大を引き起こすかどうか、さらにパンデミック(世界的流行)に至るかどうかを判断するには、十分な情報が得られていない。死亡した研究員が肺ペストに感染していたのか、あるいは試験管に入っていたとされる物質が何らかの形で改変されていたのかについても、確かなことは分かっていない。
仮に同研究員が肺ペストに感染していたとしても、これがパンデミックにつながる可能性は低いだろう。同感染症は人から人へと感染し得るものの、ペスト菌は通常、空気中に浮遊し続けるわけではないため、例えば新型コロナウイルスほど効率的に広がることはない。さらに、感染者の治療に有効な抗生物質が存在するため、感染の拡大や重症化、死亡を引き起こす可能性は限定的だ。
肺ペストへの感染を予防するには
世界保健機関(WHO)は、一般市民への危険性は低いとしている。カリフォルニア州やニューメキシコ州、アリゾナ州など米西部諸州ではペスト菌が自然界に存在しており、年間約7件の症例が報告されている。これらの症例の大半は、肺ペストより毒性の弱い腺ペストだ。
予防策を講じたい場合は、ノミとの接触や暴露を避けるとともに、急速に進行する肺炎の症状が現れた場合は速やかに医療機関を受診することで、ペストに伴う危険性を軽減することができる。肺ペストは危険で重篤な疾患だが、早期に発見されれば現代の医療では効果的に治療することが可能だ。


