AIチャットボットへのあらゆる問い合わせや、自律型エージェントのあらゆる動作を支える巨大なデータセンターは、驚異的な量のエネルギーを消費している。
例えば、米テキサス州アビリーンで推進されているデータセンター構想「スターゲートプロジェクト」では、最大1.2ギガワット規模の電力消費が想定されており、これは米国の約100万世帯の年間電力消費量に相当する。これは数あるデータセンターのほんの一例にすぎず、こうしたAIブームを支えるために必要なインフラには数千億ドルが投じられている。しかし、その拡大の代償は、インフラを建設して運用するテクノロジー企業だけにとどまらない。
電気料金の値上がり、水資源への負荷、手厚い税制優遇措置、汚染、健康への懸念は、消費者、納税者、地域社会、さらには環境に多大な負担を強いる可能性がある。これらはAIデータセンター・ブームの「隠れたコスト」であり、無視することがますます難しくなっている。
電気料金への影響
新たなデータセンターが次々と稼働するにつれ、すでに逼迫している送電網に膨大な新規需要が加わることになる。そして、そのコストの一部は、消費者の電気料金へと転嫁されつつある。2025年のブルームバーグの分析によると、大規模なデータセンターが稼働している地域では、卸売電力価格が5年前と比較して最大267%も高騰しているところもあるという。また、非営利消費者組織によるメディア「コンシューマー・レポート」によると、データセンターの影響で家庭の電気料金が上昇することを米国民の78%が懸念している。
人々の健康への影響
データセンターが周辺地域に及ぼす健康への影響については、研究者たちによる調査が進んでいる。カリフォルニア工科大学とカリフォルニア大学リバーサイド校による報告書では、データセンターに関連する大気汚染によって、2030年までに米国で年間1300人が死亡する可能性があると予測している。研究者や地域住民は、喘息や心血管疾患、さらには継続的な騒音による影響についても懸念を示しており、近隣住民からは頭痛、吐き気、睡眠障害、高血圧などの症状が報告されている。
地方財政への負担
自治体が投資誘致を競い合うなかで、データセンターの運営事業者は巨額の税制優遇措置を享受してきた。しかし、これらの優遇措置は公的財政への負担にもなっている。米オハイオ州では、データセンターに対する税制優遇措置に伴う税収減が、2024年の5億5500万ドル(約876億円)から2025年には16億ドル(約2530億円)へと増加し、これを受けて州知事はプログラムの一時停止を決定した。そのほかにも複数の州で10億ドル(約1580億円)以上の損失が報告されている。政府や自治体は、インフラ投資が雇用創出や経済成長につながることを期待してこれらの優遇措置を提供しているが、その代償として、公共サービスやインフラ整備に充てられるはずだった税収が失われているのだ。



