私とローレン・ゲンスレー記者との共著、新しいForbesの電子書籍「貯金術:貯金の達人についてのForbes ストーリー」で集めた話のように、ここで語られているのは、不可能とまでは言えないまでも金銭的な困難に立ち向かい見事に克服した人々の話である。
一組のルームメイトは「何も買わない」と題したプロジェクトに乗り出した。別のカップルは住居、交通費、食費を最小限に切り詰め、30代で引退するまでほとんどの買い物を控えた。ある男性は15万ドルの年収を捨て年間3万ドル未満で世界を旅している。
こういった話は単に実際にできるかという視点から見るとびっくり仰天だが、私がいつも感心するのは変化が最初は心理的なレベルから始まるという点だ。こういった人々の多くが、車より自転車、外食より家で料理、お金のかからない投資と税金の最小化という同じ戦術を取っている。この達人たちに各々の選択をさせ、それを継続させた動機は一人一人違ってそれぞれ独自だ。
以下は、自分のお金について考え方を変えるだけで特別なことは何もしなかったこういった貯金の達人から学べる気持ちの上での秘訣だ。
1.貯金は自分をすり減らすという考えを止める
30歳で引退したブロガーのミスター・マネー・マスタッシュは「実は自分にとって最も価値のあるものを買っている:それは自由だ」と言う。だから見方を変えて、たとえば「私は自由にお金を使うのが好き」と思えば、自由をとても大切にするアメリカ人の価値観なので貯金についてもう一度わくわく感を感じられる。
カナダ人も同じように感じる。「自分の給料を全額使うのではなくその半分を貯金する。だってそれが自由と機会になるんだから」と、「1年間何も買わない」プロジェクトに乗り出したカルガリーに住むルームメイトの1人、ジェフリー・ススキエウィッチさんは言う。ジェフリーさんとルームメイトのジュリー・フィリップさんは衣類や電気製品などの消耗品や、ヘアカットや外食、そしてガスといったサービスへの支出も止めた。
2.目標をはっきりさせる
単にやらなきゃならないからと言う理由で新たにお金の習慣を始めないこと。これでは続かない。
「『20%貯金したい』と言うのでは意味がない。なぜ貯金したいのか?貯金すべきだからじゃなくて、自分の予算全体が目標と一体となるようにする」と、1年間自分の収入のわずか51%で生活しているBlonde on a Budget のブロガー、ケイト・フランダースさんは言う。
3.厳格な規則ではなく指針に従う
「ゲオフは心理学を学んだ経歴を持つので、われわれは何かに全力で関与するが、人間なので間違いを犯すと認める、受諾と関与セラピーと呼ぶモデルを使用した」と、「1年間何も買わない」プロジェクトのフィリップさんは言う。「だからゲオフと私は知っていながらズルをした。時には40点に満たない日もあり、散々な一日だった日には迷わず宅配ピッツアを注文した」。
4.友達との付き合いでより安価な選択肢の提案を恐れないこと
「私は友達に『その代わりにあなたの家で何かやりましょう』とか『バーベキューにしよう』と言うことに問題はなかった。いったん提案すると、多くの人が賛成するのに驚くわ。だって本当は大半の人が自分たちはできると思っているほど外食はできないのよ。それに外食で30ドル使うよりこれなら5ドルか10ドルで済むと内心考えているわ」とフランダースさんは言う。
5.10年間で繰り返し発生する経費を考える
「通勤距離が20マイルあるカップルは、ガソリンに数ドルの出費を拒むにも関わらず、約15万ドルを10年毎に車関連に使う」とマネー・マスタッシュさんは言う。車通勤で無駄になる時間の価値を織り込めば、実際のコストは少なくとも10年毎に30万ドルだと考える。
6.お金と同じくらい時間を大切に
ロサンゼルスでブランド戦略会社を経営していたコリン・ライトさんは、オシャレなマンションに住んで年収は15万ドルと満足な生活を送っていたように見える。ただライトさんは週100時間働いていた。最初の外国旅行で、常に旅をしていたいと思ったことを憶えている。すぐにより儲かる仕事のオファーがあったが、それを断って旅に出る生活を選んだ。「私は当時24歳、残りの20代のことを考え、『お金をもっと稼ぐことはいつでもできるが20代を取り戻すことはできない』と考えた。どんなにお金を持っていても時間は取り返せない」とライトさんは言う。現在ライトさんは、世界を年間3万ドル未満で旅している。
7.自分の価値観と友達になる
こういった貯金の達人の一部は、自分の選択が社交生活にそれほど影響を与えていない。ただ、人によっては大きな影響を与えている。例えばミスター・マネー・マスタッシュは「私たちはおおむね友達と同じことをやった。パーティを主催したり、キャンプやマウンテンバイクに乗ったり、スノーボードをやったり、そして良く働いた。違いは主に隠れた無駄にある。私はローンで新車に乗り換える代わりに古い車に乗り続けた。たぶん金曜の夜に街に繰り出して高いお酒を飲むより、家で暖炉に火を灯してワインを飲む。サービス会社を使わず自分で芝を刈るとかね」
ただ「1年間何も買わない」プロジェクトのフィリップさんとススキエウィッチさんには調整期間があった。「私たちの仲間全員が加わったわけではなく、典型的な消費者の方法で私たちと付き合おうとしたし、金のかかるものに誘ったり、少し罪の意識を持たせたりした。『ひどい、久しぶりじゃないか』って言われたよ。だから自分自身の生活にシンクロせずさみしいと感じることもしばしばあった」とススキエウィッチさん。やがて2人の新たなライフスタイルで、アートやダウンシフティング(つらい仕事に耐えながら高収入を得るよりも、収入が減っても満足度の高い生活をしようとするライフスタイル)界や、食の安全性や都会での農業に関わる人々との新しい交友関係ができた。
自分の現在のライフスタイルの選択によって、自分自身のマネー術はこういった大きな心理的難題を伴うが、得るものは大きそうだ。
物を70%処分したフランダースさんは「現在、自分最高の状態にいるような気がする」と言う。その上で「物を捨て、物を買わず、人間として自分に向き合うことができた。私は自分自身にとても満足している。私をある特定の人間に見えるあるいは人にそう思わせるものは何も買ったり所有したりする必要はないわ。今持っているものでとても満足した生活を送っている」