一般論から抜け出すための、創業者向けの対処法
ChatGPTから一般論ばかり返ってくる状態を抜け出す近道は、会話のたびにゼロから始めるのをやめることだ。OpenAIはまさにこの問題のために3つの機能を別々に用意しているが、ほとんどの創業者は、そのどれも正しく使えていない。
実際に使ううえで3つがどう違うかを、次の表にまとめた。
まず手をつけるべきは「カスタム指示」
「カスタム指示」は、ウェブ版の場合は「設定」の「パーソラナイズ」内にある。「カスタム指示」を使うと、新しいチャットすべてに適用される常設のプロフィールを書いておける(プランによって、書いておける容量・文字数が異なる)。利用者が毎回同じ前提を繰り返さずに済むよう、OpenAIがわざわざ導入した機能である。創業者の場合は、会社の成長段階、業種、狙う顧客、今優先している課題を1度入力しておく、ということになる。そうすれば、値付けや採用についての質問にも、ありきたりのひな型ではなく、自社の実際の状況に照らした答えが返ってくる。
事業に使う場合は、次のように設定するとよい。「カスタム指示」の欄に、まず自分について知っておいてほしいこととして、社名、成長段階、月の売上高または利用者数、チームの人数、実際に追っている3つの指標を並べる。続けて、どう答えてほしいかを書く。たとえば、免責の断り書きは省く、スタートアップ並みの限られた資源を前提にする、根拠の弱い考えには同調せず異を唱えるといった具合だ。このひと手間だけで、毎回事業の説明を打ち直さなくても、ChatGPTから具体的な答えを引き出せるようになる。
「ChatGPTのメモリ」は何を覚えているのか
「ChatGPTのメモリ」は、カスタム指示とは仕組みが違う。前もって書いておく必要はなく、会話を重ねるうちに細かな情報を自動でため込んでいく。たとえば、今週はシリーズA(ベンチャーキャピタルから本格的な出資を受ける最初の資金調達)の資料について相談し、翌週は採用計画について相談したとする。メモリをオンにしていれば、こちらから促さなくても、モデルが両者を結びつけて考えられる。
ただし、その引き換えに、中身を自分で管理しにくくなる。メモリによるパーソナライズは、時間をかけて利用者像を組み立てていくので便利だが、設定画面で保存された内容を定期的に見直して直さない限り、3カ月前の従業員数のような古い情報を使い続けることもある。変化の速いスタートアップであれば、顧客管理システム(CRM)の中身を点検するのと同じように、数週間おきにメモリを確かめる必要がある。
(注:「ChatGPTのメモリ」はウェブ版の場合は「設定」の「パーソラナイズ」内にあり、事前に「メモリを有効にする」をオンにしておく必要がある。チャット上からも「このルールでメモリを更新して」など指示して「メモリの概要」に追加・更新できる。またチャット上でメモリ内容を書き出させることも可能。容量・文字数といった固定の文字数上限は明示されていない)
「プロジェクト」は事業の前提をしまっておく保管庫
「プロジェクト」が解決するのは、また別の問題だ。1つの業務の流れを、他と混ぜずにまとめておくことである。プロジェクトを使うと、関連するチャット、ファイル、指示をひとまとめにしておけるので、ChatGPTは続いている作業に同じ前提を使える。資金調達、市場投入戦略(GTM。製品をどの顧客に、どう売り込むかの計画)の立案、取締役会への報告を同時にこなす創業者にとって、この点の意味はきわめて大きい。
主な業務ごとに、プロジェクトを1つずつ作るとよい。「資金調達」プロジェクトに、資本政策表(株主ごとの持ち株比率などをまとめた表)、ピッチ資料(投資家向けの事業説明資料)、投資家向けの定期報告の下書きを入れておけば、その中のチャットはすべて、自動的にそれらの前提を引き継ぐ。別に「GTM」プロジェクトを立ち上げ、理想的な顧客像(ICP)のメモや、集客チャネルごとの成果データを入れておけば、ChatGPTがマーケティングの助言に資金調達向けの言い回しを混ぜ込むこともなくなる。スタートアップの戦略づくりには、これが最善のChatGPTの使い方である。1つの長いスレッドにすべてを詰め込むのではなく、創業者が実際に仕事を切り分けているやり方を、そのまま映しているからだ。


