市場のダイナミズムも変わった。1918年の長者番付に名を連ねた人々の社会への貢献の多くは、過去108年間にわたって受け継がれ、コダックのカメラからデューク大学に至るまでさまざまなものを創出した。しかし、彼らの莫大な財産のほとんどは時間の経過とともに散逸したり、競合他社によって失われてしまったりした。近年の「フォーブス400」には、フォード、アスター、ヴァンダービルトといった家名は見当たらない。ロックフェラー家の富でさえ200人余の相続人に分散され、その誰一人として保有資産額はビリオネアの基準である10億ドル(約1500億円)にはるかに満たない。
それどころか、現在「フォーブス400」に名を連ねる人々の7割以上は、相続によらず自力(セルフメイド)で財を成した「一代富豪」だ。1918年に米国で最も裕福だった30人の約3割は、製造業や資源採掘で富を築いた。いまや「フォーブス400」の富豪の半数は金融・テクノロジー分野で富を得ており、その中には経済秩序を再び覆そうと目論む人工知能(AI)分野の巨頭たちも多く含まれている。
フォーブスが初めて発表した長者番付に掲載された、1918年の米国で最も裕福だった30人を以下に紹介しよう。なお、各人の資産額は、消費者物価指数(CPI)に基づくインフレ調整を用いて2026年現在のドル相場に換算したものを併記している。(円表記は1ドル=157円で換算)
1位:ジョン・D・ロックフェラー(1839–1937)
富の源泉:石油
純資産額(1918年当時):12億ドル
純資産額(2026年相場):290億ドル(約4兆5500億円)
「ロックフェラー氏の富は、現金化して均等に分配できたとしたら(そんなことは実際には不可能だが)、米国のすべての男性、女性、子どもに1人あたり10ドルずつ配ることができるだろう」とB・C・フォーブスは記した。ロックフェラーは生涯で5億ドル以上(現在の価値で少なくとも115億ドル=約1.8兆円)を寄付したが、相続人たちが保有する資産の総額は今なお推定125億ドル(約2兆円)に上る。
2位:ヘンリー・クレイ・フリック(1849–1919)
富の源泉:コークス・鉄鋼
純資産額(1918年当時):2億2500万ドル
純資産額(2026年相場):54億ドル(約8500億円)
ピッツバーグ出身のフリックは、製鉄に欠かせない原料であるコークスをアンドリュー・カーネギーに供給し、カーネギーの鉄鋼事業のパートナーとして巨万の富を築いた。
3位:アンドリュー・カーネギー(1835–1919)
富の源泉:鉄鋼
純資産額(1918年当時):2億ドル
純資産額(2026年相場):48億ドル(約7500億円)
カーネギーは『富の福音』と題した著作で「これほどの大金持ちのまま死ぬ者は、不名誉な死を遂げる」と説き、生涯で推定3億5000万ドル(現在の価値にすると少なくとも65億ドル相当)を慈善団体に寄付した。ビル・ゲイツとウォーレン・バフェットが立ち上げた寄付啓蒙活動「ギビングプレッジ」の先駆けといえる。


