美容市場の成長著しいタイで、カネボウ化粧品の高価格帯ブランド「KANEBO」が存在感を高めている。2026年1月に日本に先駆けて発売した化粧品「メルティフィール ウェア II」が、高温多湿の同国で支持される高価格帯パウダーファンデーションのなかで売り上げ1位を記録。競合ひしめく激戦区で他ブランドとの差を大きく広げ、断トツ首位に躍り出た。成功モデルを築いた木津裕美が重視したのは、効能でも数字でもなく、現地消費者の“共感”だ。
木津は、KANEBOが掲げる「美ではなく、希望を発信する」というパーパスを、そのままタイ市場に展開するのではなく、ローカライズしようと考えた。「素晴らしい哲学も、伝わらなくては意味がない。人々の心に根付くコミュニケーションがしたい」(木津)。ひと口に「希望」といっても、国によって意味が異なる。日本では現状を乗り越えるための力と見なすが、タイの人々はそもそも希望にあふれており、自分の魅力を最大化することに価値を置いていた。
議論の末、新たにタイに送ったメッセージが「美しさを超え、あなたの希望の力となる」。これが共感を呼び、新規客は倍増、今年上期のブランド全体の売り上げは約1.5倍に伸長した。
目指すのは「『憧れ』ではなく、『わくわく』されるパートナーになること」。タイで磨き上げた成功の方程式を手に、アジア全域での共感醸成に奮い立つ。
きず・ゆみ◎1975年生まれ。成城大学卒。98年カネボウ化粧品入社後、宣伝部に配属されブランドのPRなどに携わる。2021年から花王 化粧品事業部門でブランドマネジャーを歴任。22年に「KANEBO」の同職に着任し、25年から「LUNASOL」も兼務。



