サウジにとってさらに痛手になったのは、フーシが9月中旬、撃墜したサウジ空軍のF-15SA戦闘機の残骸を映した動画を公開したことだ。動画はのちにBBCによって検証されている。F-15SAは、サウジアラビアの現有の戦闘機で最も高性能な機種である。
🇾🇪🇸🇦 A high-value RSAF loss
— Egypt's Intel Observer (@EGYOSINT) September 16, 2026
The Houthis released footage showing the wreckage of a Royal Saudi Air Force (RSAF) F-15SA fighter jet they shot down last night over Marib, Yemen. pic.twitter.com/22SFAW8Bqt
ムハンマドはフーシと因縁がある。2015年、国防相に就任したばかりだった若きムハンマドは、フーシの排除を目的に地域諸国による軍事連合を結成した。フーシは前年、イエメンの首都サヌアと主要港湾都市ホデイダを制圧していた。しかし、サウジ主導の連合軍による内戦介入はフーシを押し戻すどころか、イエメンの深刻な人道危機を助長するかたちになり、広く不評を買った。
2022年、ムハンマドはフーシとの停戦を受け入れた。この停戦は、ここ数カ月で状況が変わるまで、おおむね維持されていた。この間、彼は一時的な平和によって時間を稼いで、経済の多角化などを目指す自身の野心的な国内事業を進められると期待していた。彼の肝煎りの事業には、計画都市「ネオム」のように構想が壮大すぎるとも評されるものもある。だが、米・イスラエルによるイラン攻撃に端を発する武力紛争の勃発でその期待は打ち砕かれた。
7月、イランが2015年以来となるサヌア直行便の再開を試みると、サウジは介入した。2022年の停戦はたちまち崩壊した。そして現在、サウジではフーシによる長距離のミサイルやドローンによる攻撃が再び常態化している。
サウジにとって、同盟国やパートナー国からの支援は決してささいなものではない。米・イスラエルとイランの戦闘で、サウジが保有する米国製の高度な防空システムも消耗したのは間違いない。以前の水準まで補充するには何年もかかるとみられる。サウジが前回フーシと戦った際にも、パトリオットミサイルの備蓄は枯渇しかけた。同盟国・パートナー国による防衛支援は、サウジの迎撃ミサイルや空軍への負荷をある程度は軽減するだろう。
サウジの同盟国やパートナー国が、1991年のペルシャ湾岸戦争に際して米国が集結させたような大規模な兵力を編成する可能性は低く、そもそもそうした能力もない。湾岸戦争ではサウジに90万人規模の兵力が派遣された。一方で、現在の脅威は当時とは大きく異なるものでもある。
フセインのイラクによるクウェート侵攻後、サウジ政府は、イラク軍が最初の1週間に進撃を続ければ、サウジ最大の州でペルシャ湾側の東部州の全域を6時間以内に、広範な航空掩護(えんご)があっても12時間程度で占領される可能性があると想定していた。サウジの原油産業の中核地域である東部州は現在、イランやフーシによるドローン攻撃に対してきわめて脆弱な状態にあるものの、イランやフーシから従来型の地上侵攻を受ける可能性は低い。
それでも、サウジアラビアはいま、自国では制御できない厳しい戦略的立場に置かれている。じっと耐えていく以外、選択肢はほとんど見当たらない。


