5. ハイブリッドの安全なインフラと、物理法則に基づく耐性を可能にする
量子ネットワーク、フォトニクス(光を使って情報を伝え、処理する技術)を基盤にしたアーキテクチャー、これらに関連するシステムの試作は、計算能力の単純な向上にとどまらず、攻撃に対してより強いデジタルインフラの可能性を示している。
量子に由来する技術と従来型の耐量子アルゴリズムを組み合わせるハイブリッドの手法をとれば、量子攻撃に弱い「数学的な困難さ」という前提への依存を減らせる。こうした進歩によって、重要なシステムやWeb3(ブロックチェーンを基盤とする分散型のウェブ)の時代に向けて、より堅牢な、あるいは自ら防御するネットワークの土台を築けるようになる。
実行に向けた提言
企業には、量子の脅威がいつ現実になるのかがはっきりするまで待っている余裕はない。実務上の打ち手は、次のとおりである。
・暗号に関わる資産を漏れなく棚卸しし、価値が高く長期にわたって守るべきデータを優先する
・クリプトアジリティを高めつつ、NISTが標準化した耐量子アルゴリズムへの移行戦略を作り、試験する
・物理法則に基づくセキュリティが数値で示せる価値をもたらす、優先度の高い用途については、量子センシングとQKDを評価する
・人材のスキル向上、AIで強化した検知と対応、ゼロトラストの発展のそれぞれに、量子への意識を組み込む
・業種を越えた脅威情報の共有と、官民の連携を促す。AIと量子の脅威は、組織の境界にかかわりなく及ぶからだ
AIと量子の融合によって、脅威の様相も防御の道具立ても、すでに変わり始めている。この環境で攻撃に耐える力を保つには、4つのものが要る。先手を打つリーダーシップ。倫理に基づくガバナンス(統治)。セキュリティ手順の絶え間ない改善。そして、多くの組織で技術の進歩が備えや方針を追い越しているという、はっきりとした認識である。
成否を分けるのは、今日行動する者である。戦術を考え直し、クリプトアジリティを受け入れ、防御の強化につながる場面では量子の能力を使う者だ。先送りする者は、最も価値のある資産をリスクにさらすことになる。量子の時代は遠い先の話ではない。私たちは、今すぐ準備を始めるべきだ。


