同様の考え方は、世界有数のパーム油生産地であるマレーシア・サバ州にも見ることができる。サバ州では、個々の農園を一つずつ認証するのではなく、生産地域全体の持続可能性向上を目指す「管轄アプローチ (Jurisdictional Approach)」が進められている。行政区域を単位とするランドスケー プアプローチの一例だ。
この取り組みを支えるパートナーの一社である三井物産は、現地社会的企業のWild Asia社をコアパートナーとして、サバ州政府関係機関や RSPOとも連携しながら取り組みの検証を進めている。さらに、日清食品をはじめとするサプライチェーンの下流企業も参画を検討している。
協働の価値は、知見や役割の共有だけではない。一つの組織では実現できない規模へと取り組みを発展させるための資金を呼び込むこともできる。その好例が、エクアドルの「Living Gulf」イニシアティブである。
ユニリーバによる初期支援をきっかけに、コンサベーション・インターナショナル、エクアドル政府、そして緑の気候基金(GCF)による連携へと発展。その結果、当初5年間のマングローブ保全・再生プロジェクトは、13万ha以上のマングローブに影響を及ぼす国家規模のプログラムへと拡大した。
日本らしく改善、仕組み化、拡大へ
森林、農業、水資源の分野では、ランドスケープ規模の取り組みが着実に成果を上げ始めている。いま問われているのは、そうした有望なモデルをいかに広げていくかである。
私自身、日本企業の強みはここにあるのかもしれないと感じている。新しい仕組みを生み出すことだけでなく、成果が見え始めているモデルを改善し、仕組み化し、より大きな規模へと発展させていく力である。
そこから見えてくるのは、これまでとは異なる問いである。
長期的なサプライチェーンにとって、本当に重要なランドスケープやシースケープはどこか。信頼できるマルチステークホルダーのプラットフォームはどこで生まれつつあるのか。企業は共有する生産地域にどのように共同投資できるのか。そして、テクノロジーや資金、官民連携をどのように組み合わせれば、その取り組みをさらに加速できるのか。
重要なのは、すべてを一社で担うことではない。鍵となるのは、すでに機能し始めている取り組みやプラットフォームに参画し、それぞれの強みを持ち寄りながら、取り組みを自然が求める規模へと広げていくことにある。


