新たな職種の登場
だが、雇用市場が厳しい一方で、AIトレーナー、大規模モデルの応用スペシャリスト、AI倫理担当者といった新たな職種も生まれている。中国の産業界では、「AIを活用する職務に必要とされるスキルを持つ労働者が、推計500万人以上不足している」と、タンは語る。
タンによると、雇用市場と経済状況の変化に対応するため、中国政府は産業構造転換を促進する政策と併せ、労働者のスキル再訓練プログラム「『AI+』行動計画」を導入した。この計画が学校に重点が置かれているのは、「教育制度の適応スピードが、AIの進化よりはるかに遅い」からだ。「制度改革がテクノロジーの変化に後れを取れば、今後数年のうちにホワイトカラーの若者の雇用にさらに深刻な打撃が生じる可能性がある」と、タンは警告している。
「22~25歳の新卒者は、中国の労働市場で最も厳しい状況に置かれている層」であるとタンは指摘。中国に約2100万人いるフルタイムの学部生のうち、約75%は有名校ではない地方の公立大学または私立大学に通っている。
「この2つのグループは、AIによる労働市場の変化の中で最も脆弱な立場にある」とし、「地方の一般的な公立大学の学生は、リスクの高い中間層に位置する。歴史的に彼らは、基本的な事務作業、エントリーレベルのマーケティング、定型的なデータ支援、初級の技術アシスタント職といった広範な初級ホワイトカラー職を担ってきた。これらはまさに生成AIによって人員が減っている職種だ。彼らには、高度な職種に就くためのブランド力がなく、低賃金の現場仕事に就くことには消極的なケースが多い。エントリーレベルの求人が少なくなるにつれ、彼らの競争力は低下していく」と、タンは述べる。
不利な立場にある学生層
ハイテク産業が盛んな地域に比べて、AI関連企業が少ない都市の学校に通う学生も、比較的不利な立場にある。また、人文科学系の学生も不利なグループだとタンは指摘する。「伝統的な人文科学、基礎的な経済・経営分野、従来型の特定工学分野では、学生がAIと協働するための補完的な能力を身につけなければ、リスクは高まる」とタンは述べた。「定型的な文書作成や分析を中心とする専攻では、実践的なスキルセットを向上させない限り、その学生たちは就職で特に厳しい状況に直面するだろう」


