政治

2024.05.01 15:15

岸田総理の英語スピーチを「成功」に導いた3つのポイント

Getty Images

岸田文雄首相は米国時間の4月11日(日本時間4月12日未明)、米議会の上下両院合同会議で英語を使って演説した。

岸田総理が英語を話せることが広く認知されるきっかけにもなったこの演説は、日本人が英語で演説する際の“進化”が見えた。一国の総理大臣が、海外の議会でスピーチをするという状況を踏まえ、今回の演説について分析をしてみよう。

岸田総理のスピーチはなぜ良かったのか?

まず、総合的にみて非常によかったと言える。岸田総理の現場での演説の仕上がりも、その演説をするにあたっての様々な選択も。

ポイント1:演説する国のスピーチライターを起用したこと


今回岸田総理は、日本人ではなく1980年代にレーガン米大統領のスピーチを書いた経験があるベテランのスピーチライターを起用した。これは本当に驚くべき進化だ。

米大統領のスピーチライターの経験があれば、米国民に向かってメッセージを発信し、それを聞かせるための流れや、カギとなる言葉・文脈をしっかり把握しているわけだ。スピーチ原稿は非常にアメリカ的な構成で、米国人である聞き手にとって耳に自然に入ってくるものだったはずである。

米国でのスピーチでは、冒頭でまず感謝を述べることが大切。岸田総理も、まず最初にその場にいる議長や副大統領をはじめとした米議会の人々への感謝の挨拶を述べている。そして、次に自分のパートナー(妻)を、彼女へのリスペクトを込めた言葉で出席者に紹介していた。

さらに、子どもの頃NYに住んでいたことやその時の良き思い出を振り返り、具体的に住んでいた地域であるクイーンズのご近所さんたちに向けて「私と私の家族をとても歓迎してくれて、ありがとうございました。私はそれを決して忘れませんでした。」と話した。

その上で、アメリカへの声援とも言える「自信を取り戻してほしい」という強いメッセージを伝えた。これは、特に民主党の人々には心強い言葉だったのではないだろうか。文化や生活背景、そこに自ら身を置いたことがある経験を語ることにより感性に訴え、共感を生む構成だ。

スピーチ内で使われているワードが比較的平易な言葉で構成されていたことも、アメリカの公的な場でのスピーチ(パブリックスピーキング)の慣習に準じていた。おそらくスピーチライターの原稿からさらに、総理が話しやすいように単語を変更していったのではないだろうか。基本的に英語が使える人だからこそ、このような効果的な改善ができるのだろう。

ポイント2:英語力の素地の高さと努力量


今回のスピーチ動画を見ると、緊張をしていることがとてもよくわかる動作が体のいくつかの箇所に顕著に現れていた。しかし、声ははっきりしていてとても聞きやすかった。話すスピードは、一般的な米国人のスピーチと比較してゆっくりではあったけれど、別段気持ち悪く感じるものではなかった。
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文=日野江都子

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