経営・戦略

2025.09.20 09:15

美容室倒産が過去最多へ なぜ美容師は消えるのか

gettyimages/t.maz(写真はイメージで記事本文とは関係ありません)

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ひと昔前「カリスマ美容師」が世を席巻し、憧れの職業として美容師は常に上位を占めていた。現在でも人気のスタイリストたちが発信するSNSが話題になっている。しかしそんな華やかなイメージの裏側で、今、美容室業界は深刻な人材・後継者不足に直面しているようだ。

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株式会社帝国データバンクの調査によると、2025年1~8月に発生した美容室の倒産件数は157件。前年同期(139件)を上回り、3年連続の増加となった。通年でも過去最多を更新する可能性があることがわかった。

【調査概要】
集計期間:2000年1月1日~2025年8月31日まで
集計対象:負債1000万円以上・法的整理による倒産

美容室倒産の背景には、競争の激化や材料費・テナント料のコスト高と並び、「美容師不足」という避けて通れない課題があるようだ。特に「サロンに所属しない」フリーランス化が進むなかで、技術や人気を持つ美容師が独立し、店舗側に人材が残りにくい状況が顕著になっていた。そのうえ、低賃金と長時間労働の改善を求める既存スタッフの流出が加速し、従来通りのサービスが維持できなくなるケースも出始めているようだ。

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教育サイクルが回らない現場

これまで美容師の育成は「自主的な居残り練習」や先輩の厳しい指導に支えられてきた。しかし最近では、厳しい指導は「コンプライアンス的な問題」ともなりやすく、現場での教育も制約が多い。また働き改革などで新人の側も「定時で帰る」という働き方を選び、練習時間を割かない傾向が広がっている。

筆者の知り合いに複数の美容師がいるのだが、みな口を揃えてこう嘆いている。「若手は学校で必要最低限のスキルは学んでくるが、それ以上のスキルアップのための自主練習はほとんどせず、定時で帰るようになった。また、スキルが高いベテラン勢には指名が集中しているため、新人への教育時間を確保するのが難しい」。結果として、新人が育たずに辞めてしまう悪循環に陥っているというのだ。

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文=福島はるみ

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